広報誌「かけはし」

■2010年8月 No.467

事 業 報 告 の 概 要

1.健康保険組合をめぐる情勢
 平成21年度健保連の事業計画では、取り組むべき重要施策として @医療保険制度については、高齢者医療制度のあり方の検討や財政調整・一元化阻止活動、A健保組合財政問題については、安定した社会保障財源確保の要請やセーフティーネットの強化、B特定健診・特定保健指導については、円滑かつ安定した制度運営の推進、C診療報酬体系・医療提供体制については、医療費の適正化や患者中心の効率的で効果的な医療提供体制の実施、DIT化事業の推進については、レセプトオンライン化等への対応など、メリハリをつけた事業を遂行していくこととした。

 (1) 健保組合は1485組合に

 健保組合は21年4月1日現在1485組合となっている。解散組合の推移は、16年度27組合、17年度18組合、18年度9組合、19年度12組合、20年度14組合となっており、標準報酬の伸びが期待できないなかで、医療費の増加や高齢者医療制度への納付金・支援金等の負担増加などにより財政が極めて厳しい状況にあることが解散の主な理由となっている。

 (2) 21年度予算、6152億円の赤字を計上

 健保連は4月10日、2年連続で最悪の規模となる「平成21年度健保組合予算早期集計の概要」を発表した。6152億円という赤字予算の要因は、高齢者医療制度への納付金・支援金等の負担増加や経済状況の悪化が保険料収入に影響し平均保険料率の上昇にもかかわらず収入の落ち込みなどによるものである。赤字予算を計上している健保組合は、92%にものぼり、完全にマイナスの財政構造となっている。

 (3) 21年度版高齢社会白書

 5月に発表された白書では、最近の高齢者像を、活動的な高齢者の増加を期待する一方、孤立した高齢者を懸念しており、新たな居場所や地域社会とのつながりを持てる環境整備の必要性を提言している。
 また、高齢化の状況は、20年10月現在、65歳以上の人口は過去最高の2822万人で総人口に占める割合が22.1%、75歳以上の人口は1322万人で同じく10.4%と初めて10%を超えた。
 高齢者人口は、平成67年には2.5人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上となり、生産年齢人口の1.3人で1人を支える社会となると分析している。

 (4) 21年度交付金交付事業の見直し

 健保連理事会は7月3日、21年度交付金交付事業の見直しについて論議し、高齢者納付金等の負担を緩和する緊急支援策の継続、財政窮迫交付金、負担軽減交付金を含め交付金の資産基準を緩和し、不動産や支払基金委託金などを保有資産から控除する実施規程を了承した。

 (5) 社会保障制度が衆院選の争点に

 民主党は7月27日に「マニフェスト」を、自民党は7月31日に「政権公約2009」を発表した。
 両党とも、社会保障制度の充実を政権選択のための重要な政策に据えている。医療分野の政策では、22年度の診療報酬の改定を両党とも引き上げるとし、後期高齢者医療制度は、民主党は廃止、自民党は75歳以上の被用者を現役の制度に継続加入を認めるなど、現行の枠組みを維持し改善に取り組むとした。

 (6) 鳩山内閣9月16日に発足、厚労大臣に長妻昭氏就任

 長妻厚労大臣は、9月17日の共同会見で後期高齢者医療制度を廃止するが、旧老人保健制度には戻さず、新しい制度に移行することを示唆した。

 (7) 20年度決算見込、3060億円の赤字計上

 健保連は9月11日、20年度健保組合決算見込は、経常収支で3060億円の赤字を計上と発表した。とくに前期高齢者納付金の負担が財政悪化の大きな要因で、全健保組合の約7割が赤字となった。
 高齢者医療費への負担である拠出金等は、前年度比18.3%増と大幅に上昇、保険料収入に占める拠出金等の割合も過去最大の44.3%に達した。
 また、経済不況に伴う保険料収入の減少も著しく、一層の財政窮迫化が懸念される。

 (8) 19年度国民医療費は過去最高の34兆円強

 9月2日、厚労省の発表による19年度の国民医療費は、過去最高の34兆1360億円となった。
 高齢化や医療の高度化等に伴う自然増を要因に前年度比3%増加した。

 (9) 厚労相主宰の「高齢者医療制度改革会議」発足

 厚労省は11月6日、後期高齢者医療制度の廃止に代わる新たな制度を検討する「高齢者医療制度改革会議」の設置と委員構成を明らかにした。健保連など関係団体から9名、学識経験者6名、高齢者代表4名の計19名で構成。改革会議は高齢者のための新たな制度の構築を中心とした6つの原則を検討の基本に据えた。

 (10) 21年度健保組合全国大会を開催

 11月19日に開催された健保組合全国大会では「財政危機突破と健保組合を守る総決起大会」を副呼称として、@高齢者医療制度の改革と適正な公費投入の実現、A健保組合の過重な負担を軽減する財政支援の継続・拡大、B制度間の財政調整・一元化の断固阻止、C保険者機能を十分発揮できる組合方式の推進、の4項目を全健保組合の総意として決議した。

 (11) 「高齢者医療制度改革会議」が初会合

 11月30日、厚労相が主宰する「高齢者医療制度改革会議」は、後期高齢者医療制度の廃止に代わる新たな制度の議論を開始した。厚労省事務局は、22年末に改革会議の最終報告、23年1月の通常国会に法案提出、成立後2年の準備期間を経て25年4月に新制度を施行するとの改革スケジュールを示した。

 (12) 肩代わり再現に断固反対

 健保連は12月4日、緊急記者会見で、厚労省が社会保障審議会医療保険部会に提案した協会けんぽの国庫補助を健保組合などの負担に転嫁する後期高齢者支援金の費用負担の見直しに対し、「国の責任を放棄し、健保組合に負担を転嫁させることは、肩代わりの再現であり、遺憾の極みである。断じて受け入れることはない。総力をあげ、断固反対の意思を貫いていく。」とする平井会長の見解を発表した。
 また、平井会長は12月25日には、肩代わり案を22年度予算等に反映した政府の決断に強い不信感を表明し、反対活動を強化し引き続き法案作成や法案の国会提出の撤回を要請していくこととし、問題は金額の多寡でなく「理に適わない問題で本質が歪められ、次々と負担が増やされることは耐えられない」と強調した。

 (13) 高齢者医療制度改革会議で「健保連の考え方」を提示

 1月14日の第2回改革会議において、新たな制度のあり方を議論するなかで、健保連は従来から主張している65歳以上を対象とする制度の構築を提案し、5割を目途に公費負担を投入すべきであるとして、このための安定財源の確保が重要であるとした。
 また、健保組合の財政悪化に触れ、協会けんぽの国庫補助を健保組合が肩代わりする案を批判し、協会けんぽ財政対策は国の責任で実施するよう主張した。

  (14) 肩代わり案阻止へ街頭活動を実施

 健保連は2月12日、大阪・東京・神奈川・愛知・福岡の各都市で「肩代わり法案の断固反対」を訴える街頭活動を実施した。
 大阪では、加藤会長をはじめ健保組合、大阪連合会の役職員51名が御堂筋の梅田から難波まで8カ所で実施、朝8時から通勤途上のサラリーマンなどに2500枚のビラを配布して、健保連の主張に理解を求めた。

  (15) 中医協が22年度診療報酬改定を答申

 中医協は2月12日の総会で、22年度の診療報酬改定をまとめ、長妻厚労相に答申した。3月上旬に告示し、4月1日施行となった。
 22年度改定は、年末の予算編成過程で決定した全体の0.19%引き上げ、10年ぶりのプラス改定で実施。診療報酬本体はプラス1.55%、薬価等はマイナス1.36%となった。
 今回は、勤務医対策や救急、小児、産科、外科等の急性期入院医療の充実など、病院への重点配分や診療所と病院間の再診料の点数統一、明細書の無料発行など改定の主要項目を肯定的に評価できる内容となった。

  (16) 高齢者医療制度改革会議の議論内容

 2月9日の第3回改革会議では、「制度の基本的枠組みおよび運営主体のあり方」をテーマに集中論議された。厚労省からは、健保連の「一定年齢以上の別建て保険方式を基本とする案」など、4案が提示され、それをもとに議論された。
 3月8日の第4回改革会議では、「費用負担のあり方」をテーマに集中論議された。厚労省は高齢者医療費を支える財源に想定される、@公費、A高齢者の保険料、B若年者の保険料、C患者負担について論点と課題を提示、また「高齢者医療と市町村国保の一体運営等」に基づく財政試算が示され議論された。
 健保連は、公費投入のメリットが活かされる制度の構築を要請。ほとんどの委員が公費の拡充の必要性を指摘し、新制度における公費拡大は、ほぼ共通の認識となった。

  (17) 「国保法等改正法案」の審議経過等

 政府は、2月12日の閣議で「医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法等の一部を改正する法案」を決定し、国会に提出した。
 肩代わり案を含めた協会けんぽ財政対策、国保の財政基盤強化策の延長、高齢者医療制度の負担軽減措置の延長を3本の柱とした期限を設けた暫定措置が中心となっている。
 「国保法等改正法案」は、3月25日の衆院本会議で審議入りし、自民党は長妻厚労相の趣旨説明を受けて、後期高齢者支援金の総報酬制の導入に対し「健保組合への負担のつけ回し」と批判し、撤回を求める修正案を提出することを明らかにした。
 同改正法案は、衆院厚労委員会に付議され、3月31日に提案説明、4月2日から本格審議に入った。
 なお、「国保法等改正法案」は、4月27日参院厚労委員会での白川専務理事の意見陳述等を経て、5月11日参院厚労委員会で可決および附帯決議、5月12日参院本会議で可決成立した。
 いわゆる肩代わり問題の修正撤回を求めた健保連の終始一貫した反対活動に反し、ほぼ原案どおり成立したが、衆参両院を通じた審議の過程で、健保連の主張は広く浸透し、参院での附帯決議(@財政支援は24年度まで継続、A若年者の負担が過大なものとならないよう等)への反映という形で一応の決着が図られた。

2.大阪連合会の事業活動概要
 大阪連合会では、理事会や各委員会で時宜に応じた活発な論議を展開した。とくに協会けんぽへの国庫補助の肩代わり案阻止については、多数の健保組合が組合会決議あるいは理事長声明を行うとともに、関係各方面に理解と支援を強く要請するなど、全健保組合が一丸となって取り組んだ。また、円滑な事業運営に資するための各種事業を実施した。

 (1) 大阪府保険者協議会における集合契約の推進活動

 21年度の特定健診・特定保健指導の集合契約については、大阪連合会が代表保険者として大阪府医師会ほか6カ所の健診機関と折衝し、契約を締結した。

 (2) 21年度健保組合予算(大阪分)集計

 大阪182組合の21年度予算では、前年度比でみると、被保険者数は増加(1.56%)、被扶養者数は減少(2.83%)、標準報酬月額は37万0198円で0.85%減少、賞与額は9.61%も減少した。1人当たりの法定給付費は23.3万円で1.7%増加し、納付金等は横ばいであった。保険料収入に対する納付金等の割合は44.9%と0.7%伸びている。赤字予算は162組合で計上され、厳しい財政状況が続いている。

 (3) 20年度健保組合決算見込(大阪分)集計

 大阪183組合の20年度決算見込では、標準報酬・賞与がマイナスとなり保険料収入が減少し、拠出金・納付金等が増加しており、経常収支は317億円の赤字となった。前年度は187億円の黒字であったので、著しく財政が悪化したことになる。

 (4) 柔道整復師の施術につき指導・監査の強化等を要請

 大阪連合会では、10月14日、柔道整復師の施術に係る指導・監査の強化等について、厚労省近畿厚生局へ要請した。
 柔道整復師の不正・不当請求は、健保組合の保険者努力にもかかわらず、依然として後を絶たず、行政当局に対して指導・監査の一層の強化と保険者への的確な情報提供を求めた。
 また、療養費の受領委任払いを廃止し、償還払いに改めることや施術内容がわかる領収証発行の義務づけなど、柔整療養費支給制度の改善を要請した。

 (5) 地元国会議員への要請活動

 健保組合全国大会で、財政危機突破の実現に向けた決議と4項目のスローガンを満場一致で採択したことを受け、議員会館・地元事務所等に5名の国会議員を訪ね、理解と協力を求める要請活動を実施した。

 (6) 肩代わり案阻止活動

 12月には、突然浮上した協会けんぽの財政対策としての国庫負担の肩代わり等の阻止を健保連大阪連合会としても民主党大阪府連代表に要望するとともに、2月には御堂筋の梅田から難波まで8カ所でビラ配布の街頭活動を行い、理不尽な国庫負担肩代わり案阻止を訴えた。
 また、肩代わり案に反対する組合会での決議や理事長声明が多くの健保組合で実施された。

 (7) 広報活動(広報委員会関係)

 機関誌「かけはし」および「ホームページ」を通じ、「肩代わり案」阻止活動など、緊迫する健保組合をめぐる情勢および健保連の考え方や要請活動を掲載するとともに、大阪連合会の主要な事業活動の広報に努めたほか、会員組合の広報活動を支援するための広報研究会を開催した。

 (8) 組合業務支援活動(組合業務委員会関係)

 健保組合役職員の資質向上と連帯感の醸成に有効な個人情報保護講習会、初任者実務講習会、組合担当者実務講習会、パソコン研修会、事務長研修会等を開催した。

 (9) 医療費適正化対策活動(医療給付委員会関係)

 医科レセプト点検事務研修会、歯科レセプト点検事務研修会、求償事務研修会、柔道整復等療養費適正化講習会やレセプト相談・法律相談等の諸事業を実施して医療費適正化を図り、会員組合の財政健全化に努めた。また、支払基金に対して、事務連絡協議会を通じて審査など問題点の解決を要請した。

 (10) 健康開発共同事業推進活動(保健共同事業委員会関係)

 保険者に義務づけられた特定健診・特定保健指導に関連して、メタボリックシンドロームに着目した健康セミナーを実施するとともに、会員組合のニーズを踏まえた健康教室や心の健康講座などを開催したほか、契約保養所・プール施設の利用促進・各種イベントの後援や協賛等、多方面からの推進を図った。
 また、保健師活動では、健保組合における特定保健指導を支援するとともに、保健師連絡協議会での保健活動を支援した。

 (11) 総合組合活動(総合組合委員会関係)

 総合組合の実態を調査・研究し、有効活用を図った。
           
   
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