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職場環境を生かした健康づくり

〜 食・栄養面からのメタボ対策 〜 |
7月21日、薬業年金会館で健康セミナーを開催。大阪市立大学大学院 生活科学研究科 教授 由田克士氏が「職場環境を生かした健康づくり〜食・栄養面からのメタボ対策〜」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨) |
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由田 克士氏 |
◆肥満
肥満の原因には、摂取エネルギー量が消費エネルギー量を上回り、過剰なエネルギーが脂肪となり体内に蓄積される「単純性肥満」や、なんらかの疾病が原因で、体脂肪が増加する「症候性肥満(二次性肥満)」があります。一般的に肥満の90%以上は単純性肥満といわれています。よく、水を飲んでも太るという方がいらっしゃいますが、そのようなことはありません。
国民健康・栄養調査によると、近年では、成人の肥満者の割合は減少傾向にあり、子供の肥満も減ってきています。他方、20〜30歳代の女性については、やせの割合が上昇傾向にあり、危惧されます。
◆栄養・食生活の特徴と改善のための環境整備
食事は、たばこやお酒と違い、絶対にやめることはできません。また、不足したり過剰に摂取することも問題であり、栄養素間相互のバランスも大切です。一般的に、現在の食行動や食事内容は習慣的なものであるため、急に改めることは容易ではありません。望ましい食習慣を身につけてもらうためには、本人の努力とともに、個人や集団に対する継続的な正しい情報提供や動機づけなど、食・栄養環境の整備や支援体制の構築が重要な要素となります。
職域においては、特定多数の個人に対して繰り返し継続的に取り組みを実施できるという強みを生かした取り組み(介入)が考えられます。具体的には健康管理部門での保健指導の実施や、社内報、掲示、回覧、イントラネットを活用した継続的な食・健康情報の提供、従業員食堂が設置されている事業所では、保健指導や情報提供で得られた知識を生かして、適切な食事を自ら選択して食べることの繰り返しによって、望ましい食習慣やスキルを身につけることが期待できます。
一方、本人には食事改善の意思があるのに、本人の知識やスキルでは対応しきれないレベルの情報提供しか行われていなかったり、勤務体制や時間的な制約により十分な情報提供や支援を受けられない方など、メタボ脱却のため、健康教育の効果をあげるための食環境整備や仕組みの構築は非常に重要なポイントとなるでしょう。
◆従業員食堂の活用
そこで、健康・栄養教育の場として従業員食堂を活用することを勧めます。メリットとしては、1回にアプローチできる時間は限られますが、繰り返し利用されることから、正に継続的な取り組みが可能です。また、勤務時間を割かずに取り組める点も大きなポイントです。従業員食堂の食環境や、そこで提供される食事を積極的に改善することは、情報提供などのポピュレーションアプローチだけでなく、有所見者へのハイリスクアプローチへの波及効果も期待できます。
すなわち、栄養・食生活の面からの取り組みは、事業所全体の健康度を向上させ、生活習慣病の予防を推進するための効果的な手段であると考えられます。ただし、効果を期待するには一定の時間が必要なことも忘れてはいけません。
◆職域における関連職種間の連携・協力
例えば、職域内において、健康管理部門による特定保健指導の実施期間やその内容に応じて、職域全体に対し望ましい栄養・食生活に関する情報提供が行われているか、従業員食堂では、対応する望ましい食事が提供されているか、望ましい食行動が習慣化されるようなイベント等が実施されているのかなど、健康状態の維持や改善には、栄養・給食部門や事務・管理部門、健康管理部門の戦略的な連携・協力が不可欠であると考えられます。
実際、管理栄養士、医師、看護職、事務方間で連携体制が確立しているいくつかの施設では、すでに望ましい結果が得られていることも学会等で報告されています。このことから、「関連する職種間の連携と協働」は、職場環境を生かした健康づくりを成功させるために、欠かせない要素であるといえるでしょう。 |
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