■2010年5月 No.464
健保組合も積極的に禁煙対策を
− たばこ規制の推進で医療費適正化 −
厚生労働省は本年2月25日、他人が吸うたばこの受動喫煙による健康被害の防止を徹底するため、都道府県等の自治体へ禁煙措置を求める通知を出した。これにより、今後はレストランや居酒屋、遊技場等の娯楽・商業施設や学校、病院等の公共施設、鉄道・駅、ホテル等の交通機関やその他の施設は原則として全面禁煙になる。
わが国は、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約を批准しており、受動喫煙を防止するための実効性ある対策が求められていた。そもそも受動喫煙の防止は、平成15年に施行された「健康増進法」で定められているが、具体的な施策が示されたのは今回が初めてである。
しかし、健康増進法には罰則規定がなく、今回の通知にも強制力はないことから、残念ながらその効果のほどはまだわからない。とはいえ、やっと国も禁煙に取り組む動きが出てきたことは評価できる。
一方、国にさきがけて、自治体等では独自に全面禁煙を実施するところが出てきた。平成14年に東京都千代田区が「歩きたばこ禁止条例」を施行して以来、路上喫煙を禁じる条例が大阪市を始め全国に広がっている。そして、神奈川県では、本年4月1日から民間施設でも屋内での喫煙を罰則付きで規制する「受動喫煙防止条例」が全国で初めて施行された。
わが国の成人喫煙率は、男女合わせて21.8%である(平成20年国民健康・栄養調査)。しかし、家庭に子どもや妊産婦のいる割合が高い20代・30代の喫煙率は、20代では男性で41.2%、女性で14.3%、30代では男性48.6%、女性18.0%とその他の年代と比べて高い。とくに30代の女性の喫煙率は前年より0.8ポイント上昇している。少量のたばこの煙を吸っても影響が大きい子どもや妊婦等をたばこの煙から守ることが喫緊の課題となっている。
折しも、本年5月31日からの禁煙週間のテーマは「女性と子どもをたばこの害から守ろう」である。
喫煙や受動喫煙は、がん、心臓病、脳卒中、呼吸器疾患など、さまざまな病気の罹患率や死亡率を高めることは科学的にも明らかである。そして、喫煙が原因の病気に費やした医療費は、国民全体で年間4兆円以上(日本禁煙学会調べ)ともいわれている。医療費抑制が大きな課題であるわが国では、このことを再認識し、一層のたばこ規制を推進していく必要がある。
健康増進法において健保組合や事業者等は「健康増進事業実施者」と規定されている。それ故に健保組合は、今回の通知を契機に医療費適正化の一環として、たばこ対策事業により積極的に取り組まねばならない。
(K・M)