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平成21年12月21日、薬業年金会館で健康教室を開催。大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター アレルギー内科 主任部長
石原英樹氏が「感染症の予防と対応」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨) |
ウイルスや細菌などの微生物が、体表面に付着あるいは組織内に侵入し、増殖するようになった状態を、感染が起こったと定義し、感染を受けた生体を宿主といいます。また、感染が原因で起こる病的状態を感染症といいます。また、感染した宿主(ヒト)から次の宿主(ヒト)へと病原体が伝播し、感染を引き起こすこと、すなわち病気がうつるという概念を伝染病とよびます。 |
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石原 英樹氏 |
われわれの身近な感染症である「かぜ(症候群)」とは、非常に便利な言葉で、アバウトなものです。ひとくちにかぜといっても、「風邪・上気道炎・気管支炎」などの呼び方があり、80〜90%がウイルスにより引き起こされます。加えて、その原因となるウイルスは100種類を超え、特定することは非常に困難です。
原因ウイルスを特定するには少々時間がかかるので、通院された患者さんには対症療法として、体力を落とさせないような薬を処方します。ただ、医療機関を受診するということは、ほかの人への感染リスクを伴うので、できることなら自宅療養が一番だと考えますが、例外として、高齢者や慢性疾患のある患者の方などには受診を勧めます。
このようなことから、「かぜ」の診断と治療に関しては、医師や患者自身の裁量に委ねられる部分が大きいといえます。
肺炎の原因は、細菌によるものが多く、原因菌の特定が比較的容易で使用薬剤の選択肢も多いのですが、その反面、エンピリック(経験的)治療による使用抗菌剤の選択が重要になります。
呼吸器学会のガイドラインでは、最初から効果のきつい抗菌剤は使用しないことが明記されています。患者さんの体への影響のほかに、漫然と使用を続けると、いま効果のある薬剤への耐性をもつ細菌が生まれる可能性が高まります。この耐性菌が非常に厄介で、新薬を開発してもその耐性菌が出現する、といったようにイタチごっこが繰り返されてきているのです。
インフルエンザや、記憶に新しいSARSなど、航空機などによる広域でのアウトブレイクが起こります。こういった新興感染症には、効果のある薬剤は存在しているのですが、経験のある医師が少ないことが問題となっています。
このたびの新型インフルエンザにしても、ピークは過ぎたように思えますが、季節性インフルエンザとともに再び大流行することも考えられます。
日本には感染症の実地医療に従事する専門家が少ないのが現状です。この問題を解決しないと、新たな感染症が発生したとき、大騒ぎになるかもしれません。
ふだん、マスクを着用されている方も多くいますが、正しく使用しないと意味がありません。正しい使用方法は、「使い捨て、正しくはずす、口で呼吸しない」などですが、実際の実行・継続はかなり困難であると思います。ただし、他人にうつさないという観点では、一定の効果は期待できます。
うがいは1回につき最低でも含嗽(がんそう)3回、手洗いに関しても、石けんを使い流水で洗い流すのがよいといわれています。
要は、正確な知識と情報をとり入れ、冷静な判断と行動をとることが、最も重要だと考えます。 |
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