■2009年10月 No.457
政治主導による医療IT化の早期実現を!
− 元気国家日本への近道 −
政府のIT戦略本部が「IT新改革戦略」に基づき、重点施策の柱の一つに位置づけた社会保障分野、とりわけ医療保険分野におけるITを巡る環境は、この数年間で劇的な変化を遂げようとしている。
IT化の代表的なものは、一つは年金手帳・健康保険証・介護保険証の役割を一枚のカードで果たす社会保障カード(仮称)の導入である。このカードは23年度中に導入すると中間報告されている。メリットは、@年金・医療・介護のカードが一枚になるとともに、保険者を異動してもカードの返却および再発行が不要である。A医療機関で資格確認が即時に可能となり医療費の過誤請求を防げる。この削減効果は、保険者は年間約159億円、医療機関は約120億円と試算されている。
二つめは、国民電子私書箱(仮称)構想である。これは、自分の健診データ・特定保健指導データおよびレセプトデータを医師の承諾のもとに、いつでも見ることが可能となる。メリットは、@健診結果を経年でいつでも見られるので、異なる医療機関での重複健診が避けられる。A本人の全レセプトを見られるので、他の医療機関での診療内容および服薬内容が分かり適切な診療が可能となる。B健診内容とレセプトを突合できるので、本人に一番ふさわしい保健指導等で発症の予防が可能になる。
三つめは、完全オンライン化されたレセプトの有効活用である。メリットは、@年間約17億枚といわれるレセプトの分析が可能となり、多方向からの疾病分析が可能となる。Aとくにオンライン化によりタイムリーにレセプトが提供されるならば、流行病も即座に把握でき適切な対策も可能となる。B疾病の発症と経年の健診データとの突合で因果関係を分析し疾病の発症を予防できる。Cレセプト点検・縦覧点検をコンピュータでロジカルに行うことで、点検内容の充実とレベルの均一化および時間短縮が可能となる。
以上のように医療分野におけるIT化が実現されたあかつきには、国としてデータ分析に基づいた疾病対策が可能となり、国民は生涯を通じたきめ細かな健康・疾病管理を受けられることにより、医療費適正化が図られる。また、重複診療・二重健診等の無駄なコストが削減可能となる。さらに、医療関係者および医療事務担当者は事務工数の削減・効率化が可能となる。
しかしながら、これらの実現には@従来の枠組みにとらわれない全体の仕組みづくりA規制・制度・慣行の打破Bソフト・ハードの導入およびシステム構築のコストの問題C完全なるセキュリティ対策等、解決すべき課題は多い。
民主党政策集にはレセプトオンライン請求を「完全義務化」から「原則化」に改めると記載されているが、政策実施にあたっては本来の目的を見誤ることなく結論が出るものと確信している。
新政権は目先のことにとらわれず、日本医療の将来のあるべき姿に一日も早く近づくように政治のリーダーシップを発揮していただきたい。国民皆保険の日本だからこそできる、世界が羨む医療費の少ない元気国家日本を創ろうではありませんか!
(G・T)