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生活習慣病

〜 運動の予防医学的効果 〜 |
7月15日、薬業年金会館で健康セミナーを開催。京都大学大学院人間・環境学研究科 教授 森谷敏夫氏が「生活習慣病〜運動の予防医学的効果〜」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨) |
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森谷敏夫氏 |
◆生活習慣病と運動
悪い生活習慣(食事・運動など)を長期にわたって続け、遺伝的な要因と重なり、かかる病気が生活習慣病です。肥満症・糖尿病・高脂血症・高血圧症(死の四重奏)は、自覚症状がほとんどないため、重症化してしまうことが多いのです。最近では運動・医科学の研究により、慢性的な運動不足が生活習慣病の発症に関係していることが明らかになりました。糖尿病などの生活習慣病は、必ずしも遺伝で発症するものではないのです。
習慣的な運動の継続は、心筋梗塞や糖尿病などの危険度を軽減させることが、統計学的にも明らかにされています。なかでも糖尿病については、家族暦などの遺伝的要因、肥満などの危険因子があるほど、運動の予防医学的効果が顕著に表れています。
◆肥満の増加
近年、食事からのエネルギー摂取量は、終戦直後並みに少なくなってきています。しかし、男性を中心に肥満が増えているのはなぜでしょうか。答えは簡単です。便利な世の中で体を動かさない「エネルギー消費量の減少」が原因です。摂取量に対して消費量が少ないのですから、エネルギー過剰は当然の結果となり、最近の肥満の増加は、食べすぎによるものではないとわかります。
◆自律神経と筋肉の役割
体脂肪を調節しているのは自律神経で、そのなかで脂肪細胞を支配下に置くのは交感神経です。自律神経活動が低下すると、エネルギー消費機構や脂質代謝に影響を及ぼし、肥満の発症・進展に関与します。また、筋肉は人体の4割を占めており、糖や脂肪を最も大量に消費し、大きな筋肉ほど消費エネルギーも大きくなります。
習慣的な運動は、脂質代謝や糖代謝を改善し、体重や脂肪の量を調節している自律神経系の働きを向上させます。また、過剰な食欲を抑制し、内臓脂肪を低減させるなどの効果をもたらします。同時に筋肉も大きく、筋持久力の増大にもつながり、エネルギー代謝機能の改善も期待できます。
◆運動について(まとめ)
習慣的な運動を行うにあたって、どのような種目がよいのかを尋ねられることが多いのですが、正直なところ、自分ができるものならどんなものでもよいのです。身体(筋肉)をリズミックに動かすことが重要です。
運動を薬として表すと、その効果は、あらゆる病気に有効で、1回の運動で糖尿病や、高血圧、高脂血症などの予防効果が認められていますが、48時間以上は継続しません。したがって、生活習慣病の予防・改善には、1回30〜40分、週3〜5回程度の運動の継続が不可欠です。
生理学の鉄則として、使わない機能はすべて退化していき、使う機能は順応するので、健康感を高めるためには、いくつになっても運動を続けることが大切だということは言うまでもないでしょう。 |
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