広報誌「かけはし」
 
■2009年8月 No.455
時評

“新型インフル”騒動を教訓に


 本年4月末にメキシコで新型インフルエンザが流行し、相当の死者が出ているとの報道があった。またWHOはヒトからヒトへの感染が増加していることの証拠があるとし、警戒水準を「フェーズ4」とした。
 厚生労働省はこれらの情報をもとに、成田・中部・関西各国際空港において機内検疫等、厳重警戒態勢をとり、水際での阻止に取り組んだ。神戸市において高校生の新型インフルエンザ感染者が続出し、大阪府でも確認された。
 関西全体がインフルエンザ汚染地域のような印象を世間に与えたが、その後1カ月余りを経過し、騒ぎは沈静化した。
 今回の新型インフルエンザ騒動(あえて騒動という)によって検疫体制の必要性、医療機関の対応、マスメディアの過熱報道等々さまざまな問題点がわれわれに提起された。
 このような騒動になった原因は、情報が正確に伝わらず恐怖感ばかりが先立ったことにある。騒ぎの渦中において関西地方ではマスクの着用者が想像以上に多く、マスクを着用しない者は白い目で見られる始末であった。
 また、関西地方への出張や関西地方からの出張を自粛・制限した企業もあり経済活動にも影響があった。
 今秋以降に弱毒性から強毒性への変異が起こり、より多くの感染者が出る可能性は否定できない。そして、ソフト・ハード両面において十分な体制がとられているか疑問であり、医療機関・医師・看護師の数に限りがある状況下で、仮に新型インフルエンザ対策に医療資源を傾注しすぎると一般の医療対策が疎かになる懸念もある。
 今回の事件をパンデミックのよき予行演習、教訓としなければならない。
 われわれ健保組合・健保連は常々被保険者、その家族の健康の保持・増進・予防を旗頭に存在意義を示してきたところである。しかし、今回の騒動で健保組合はその責任を十分に果たしたであろうか。
 今回の問題点は、ウイルスの解明に時間がかかり、強毒性の鳥インフルエンザに対するマニュアルは準備されていたが、今回のような弱毒性ウイルス対策のマニュアルがなかったため、パニックに陥ってしまったことにある。
 そのため、今後厚生労働省は、今回の騒動の教訓を生かし、秋以降に懸念される強毒性のインフルエンザ対策の的確なマニュアルやQ&A等の作成準備を早急に進めてもらいたい。また、地方行政と調整し、正しい情報の事前発信に努めてもらいたい。
 各健保組合はそれらをもとにして、母体企業と連携をとりながら、加入員にその対応策を分かりやすく伝えていかねばならない。
  (M・T)