広報誌「かけはし」
 
■2009年6月 No.453

 5月29日、平成21年度保健師連絡協議会総会が薬業年金会館で開催され、平成20年度事業報告と収支決算が承認された。総会後には国立病院機構京都医療センター・臨床研究センター予防医学研究室長・坂根直樹氏による特別講演会「楽しくて効果のあがる保健指導〜苦手なタイプとの面接が楽しくなる!〜 」が行われた。

鮫島真理子会長
 
 総会では、鮫島真理子会長(パナソニック健保組合)が開会のあいさつに立ち、「最近では、新型インフルエンザへの対応はいかがですか。特定健診や他の業務に加えて皆さん多忙だったのではないでしょうか。保健師連絡協議会は昭和63年4月に発足して20年が経過しました。この節目の年にわれわれ保健師連絡協議会としましては、以前のよい部分は残しつつ、過去にとらわれることのない運営に移行していく所存です」と話した。
 議事は、議案第1号を玉木副会長(ダイハツ健保組合)から平成20年度事業報告があったあと、議案第2号を本間幹事(三洋電機連合健保組合)から平成20年度収入支出決算について、議案第3号を赤座監事(出版健保組合大阪支部)から平成20年度収支残金処分についてと監査報告が、議案第4号を再び玉木副会長から次回総会について(総会を年1回とすること)が行われ、いずれも承認された。
 その後、大阪連合会の宗像事務局長代理から健保組合を取り巻く情勢報告があった。
 同氏はこのなかで、健保組合の窮状について、「昨年度後半からの経済状況の悪化というのは、健保組合の財政を直撃するものであり、被保険者数の伸び悩みと給与(標準報酬)、賞与(標準賞与)のダウンで保険料収入は大きな痛手。とくに賞与については、今夏の妥結状況(日本経団連まとめ)では対前年度比マイナス19%となっており、実際には予算より遥かに厳しいとみられている。
 支出については、昨年度から始まった高齢者医療制度への納付金、支援金等の負担増の影響が大きく、一般医療費も確実に増加している。21年度健保組合予算早期集計によると、全国で約6、200億円の赤字で、赤字組合も92%に達した」と説明した。
 その対応策については、「健保連は現在、とくに前期高齢者医療制度への公費投入を要請しているが、高齢化の進展を考えると消費税などによる安定的財源の確保が必要だ。一方、特定健診・特定保健指導は中期的展望での節約策の一環でもあり、対象者の生活習慣病予防と早期健康回復、医療費適正化を目指すもの。このような趣旨から、今後も研鑚され、さらなる活躍を祈念したい」と述べた。

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国立病院機構 京都医療センター
臨床研究センター 予防医学研究室長
坂根 直樹氏

坂根 直樹氏
 
 われわれの研究室のモットーは、(1)楽しく学べて、(2)シンプルに、わかりやすく、(3)広く、低コスト―です。
 肥満や糖尿病患者さんを対象に、効果的で楽しい健康教育や、体質診断なども行っています。また、リバウンド予防や「ポスト特定健診」を見据えた取り組みも行っています。

 保健指導対象者に対して
 現在、健康についての情報は、ちまたにあふれています。みなさんがとくに情報源にされているのがテレビによるもので、実に7割以上です。医療機関などより、テレビによる情報を信じる方も少なくないのが現状です。
 そういったなかで、特定保健指導を実施するにあたって気をつけなければならないことがあります。
 まず、「体重を減らしましょう!・もっと運動しましょう!」などの提案型の指導は、対象者に「できません」の一言で片付けられてしまうことがあります。また、肥満の方はいくら説明しても「食べていないのに太る・太りやすい体質です」など、言い訳(心理学では「抵抗」)をすることが多いので、言語的な説得は向かないこともあります。

 効果のある指導方法
 図や体脂肪モデルなど対象者の右脳(イメージ脳)を活用するほうがうまくいきます。「20歳の頃から体重は何キログラム増えましたか」という体重変化の歴史を聞いてみましょう。その歴史こそが体重増加の原因です。そして、体脂肪モデルなどをつかって実際の重さを体験してもらいます。そうすることで、対象者自身がその重みによる体への影響を考え、「痩せないといけない」と思うことができれば成功です。
 健診結果からの保健指導は、まずはよい数値の部分から話に入りましょう。よい部分をほめることで関心を引きつけてから、悪い(注意すべき)部分に入るようにしましょう。
 また、対象者が現在気になっている病気について質問し、例えば、血糖値が高く糖尿病について気になっているなら、保健指導実施者も糖尿病についての簡潔な説明ができるよう訓練をすることが必要です。
 生活習慣改善のきっかけはどんなことでもよいのです。

 保健指導のポイント
 まず、対象者との自己紹介の後、互いに“治療契約”を結ぶことが重要です。そうしないと、真剣に取り組んでもらうことが困難になります。そして、対象者自身からの動機付けの言葉「痩せなければならない」を引き出せるように努め、具体的な減量目標を尋ねます。その際に、1日に減らすべきエネルギー量を提示し、対象者自身に行動目標を設定してもらいましょう。
 目標を達成するためには、1日2回(起床時、夕食後)の体重測定がお勧めで、100c単位のデジタル体重計を使用すると、どのようなものを食べたら体重が増えた、減ったということがよくわかってくると思います。
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