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11月27日、大阪商工会議所で健康教室を開催。健保連大阪中央病院 泌尿器科医長 山中幹基氏が「泌尿器科のかかわる腎臓の病気」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨) |
泌尿器科とは、おもに尿を産生・運搬・貯蔵・排泄する臓器(泌尿器)と男性生殖器における疾患を治療する臨床科ですが、健保連大阪中央病院では、ほかの施設ではあまり扱われない疾患(女性尿失禁、骨盤臓器脱、男性不妊症、男性性機能障害、間質性膀胱炎)にも重点をおいています。
泌尿器科では、他科との連携も大切です。たとえば、腎不全や腎移植に関しては腎臓内科と、腎血管疾患では血管外科、糖尿病や副腎疾患では内分泌内科というように、互いの診療科で協力しながら疾患に対応しています。 |
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山中幹基氏 |
腎臓におけるおもな病態に、腎がん・腎盂がんなどの腫瘍があげられます。腎実質の腫瘍には、良性のものもありますが、約9割が悪性腫瘍で特殊なものを除いて腎細胞がんと表現されます。日本の年間発生患者数は約12、000人で、年間死亡者数は約3、500人にもなります。
標準的な治療は根治的腎摘除術があり、小さな腫瘍なら部分切除も考慮します。腎がんは化学療法(抗がん剤)がほとんど無効で、進行がんには免疫療法(インターフェロン)が用いられます。最近では、分子標的薬の使用も始まっています。
尿路結石は老若男女を通じて、泌尿器科のなかでは最もポピュラーな疾患で、男女で比べると男性の方に多くみられ、子供には少ないというものです。
昔の尿路結石の治療は、待つ(自排石)か、切る(開腹手術)しかありませんでした。しかし、現在では「体外衝撃波結石破砕術(ESWL)」により、結石治療の方法は劇的に変化しました。このESWLとは、体外で発生させた衝撃波によって結石を砕き、破砕片を尿とともに排泄させる治療方法で、非常に小さな負担で良好な治療結果が得られることから、腎臓や尿路結石の治療には有効です。
末期腎不全に対して、生命を維持させる手段として人工透析があります。そのおもなものが血液透析で、管理方法の発達により長期生存も可能になっています。しかし、透析特有の合併症や、血液透析にかかる時間、健康自己管理、透析による効率(正常腎機能に比べると10分の1)など、さまざまな問題があります。
こういった問題を打破する方法としてなされたのが腎移植です。心臓停止後からの摘出が可能な点と、生体において2個ある腎臓から1個を採取することができる点で、日本においては腎移植だけが症例数を伸ばしました。
それでも日本では、まだ臓器移植の件数はアメリカに比べてかなり少ない状態です。また、脳死段階での臓器提供が法的に認められた臓器移植法が成立して10年が経ちますが、その症例はまだ76例にすぎません(2008年10月現在)。
日本で脳死移植が少ない理由として、まず救急医療現場が多忙であることだと考えます。ただでさえ昨今の医師不足により疲弊している医療現場で、脳死判定などのデリケートな内容が重荷になっているのではないでしょうか。
ほかに、移植専門医、マンパワーの不足も考えられます。外科医や泌尿器科医が、時に一般診療より優先して移植を行わざるを得ないという現実も原因ではないでしょうか。
[ほかにも、検尿(尿蛋白・尿糖・尿潜血・顕微鏡的尿血・肉眼的尿血・膿尿)からわかる泌尿器科疾患に関する話もありました。] |
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