■2008年6月 No.441
特定健診・特定保健指導を実効あるものに
−関係者の意識改革が重要−
40歳〜74歳までの加入者を対象に、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目した特定健診および特定保健指導が、約2年の準備期間を経て、この4月からスタートしたが、いまだに健診体制や事務処理システムの整備が遅れ、順風満帆とはいえない船出となった。
政府は、高齢化にともなう医療費の増大を抑えるには、健診によって早期発見をすることがより効果的と、医療保険の世界で治療と予防を行うことを決定し、健診等の実施を各医療保険者に義務付けた。
また、5年後には健診受診率や保健指導実施率等を勘案して、各保険者が負担している後期高齢者支援金に加算・減算の措置を取ることを決めた。これは、世界でも例がなく、事業の成否について注目されているところである。
これまでは、被保険者は事業主の定期健康診断を受診し、被扶養者は各保険者が保健事業のなかで行う各種健診を受けるか、40歳以上を対象とした市町村の基本健康診査等を受診していた。
それを今後は、健診と保健指導を各保険者に義務付け、保険者にとっては被保険者は事業主健診で代行できるが、各地に点在する被扶養者は、保険者において実施しなければならず厳しいものとなっている。
この事業の成否を左右するのは、受診機関の整備、保険者の財政基盤と事務処理能力、そして健診対象者の積極的な関与と意識改革が大きく影響するところである。
まず、受診機関の整備については、健保連が担当する集合契約Aについては約2600カ所との契約が整いつつあるが、各都道府県の保険者協議会が担当する集合契約Bにいたっては、まだ一部の協議会でしか契約が行われていない状況にあり、早急の成立を願うところである。
とくに、市町村が運営している健診センターなどにおいては、いままで市町村健診の対象者としていた被用者保険の加入者を締め出し、「健診等は国民健康保険の加入者に限る」という市町村が多く、税金を納めている者にとっては納得できず、姿勢を改めてもらいたいものだ。
次に、各保険者にあっては、財政基盤や財政状況、事務処理体制において大きな差があるとともに5年後の評価という観点から、取り組み方について温度差が生じているが、「加入者の健康を確保する」という理念に基づき行動すべきかと感じる。
最後に、対象者にあっては、この制度の健診や保健指導を十分活用し、日常生活の見直しや積極的な健康づくりを通じて、「自分の健康は、自分で守る」という意識の改革を期待したいものだ。
(M・H)