広報誌「かけはし」
 
■2008年6月 No.441

 5月27日、平成20年度第1回保健師連絡協議会総会が健保連大阪中央病院大会議室で開催され、平成19年度事業報告と収入支出決算等が承認されました。総会後には潟nーティスト 取締役トレーニング・ディレクター清野健太郎氏による特別講演会「保健指導に活かすコーチングPart2『質問力』」が行われました。
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鮫島真理子会長
 
 総会は、鮫島真理子会長(松下電器健保組合)の開会のあいさつに続き、来賓の三洋電機連合健保組合の山田専務理事があいさつ。
 鮫島会長は「今年度は会員数が増えました。皆さんに支援をいただきながらより充実した研修会、情報交換会を行っていきたいと思います。そこでご理解いただきたい点が3つあります。1つ目は来年1月に活動事例報告会、情報交換会を開催するにあたり、6月中旬にアンケート調査を実施します。調査内容により、報告者を推薦したいと思いますので調査にご協力ください。2つ目は、次回以降の研修会は、他の会場で行います。3つ目は、会員名簿は役員会と事務局で検討した結果、廃止となりました。一人ひとり情報交換の場などを通して名前、職場を覚えていただき業務向上につなげていただければと考えます」と話しました。
 山田専務理事は「後期高齢者医療制度の施行により批判的な報道が話題となっています。また、特定健診・特定保健指導の実施により、保健師さんの活躍の場がいっそう広がったと思います。保健師さんの役目としてはいろいろあると思いますが、信頼と安心の2つを基本にさまざまなことに取り組んでいただきたい」と語りました。
 議事は、議案第1号について玉木副会長(ダイハツ健保組合)から「平成19年度事業報告」があったあと、議案第2号、3号について大阪連合会の宗像事務局長代理から「平成19年度収入支出決算、収支残金処分」を説明、加えて大西監事(朝日新聞健保組合大阪支部)より監査報告が行われいずれも承認されました。その後、大阪連合会の置田専務理事から「健保組合をとりまく情勢」(別掲)の報告がありました。

潟nーティスト取締役 トレーニング・ディレクター
清野 健太郎氏

清野 健太郎氏
 
 コーチングは対話手法のひとつ
 前回(3月17日)に引き続き、コーチングのお話をさせていただきます。前回の復習になりますが、コーチングは人の能力や可能性を引き出すコミュニケーション手法のひとつです。また、個人の意識と責任感を育て、自律(自立)をサポートします。
 コーチングを学ぶなかで、いかに限られた時間のなかで相手の思いや考えを聴き、その人の状況にあわせて臨機応変に対応することができるか、ヒントをつかんでいただきたいと思います。

 技能習得のプロセスは守・破・離
 茶道や能など日本の古典芸能には、技能を身につけるプロセスとして、「守・破・離」という言葉があります。「守」は、師匠や指導者の基本の型にしたがい、型を守って身につけていく段階です。「破」は、基本の型を元に自分なりに応用しながら、取り組んでいく段階です。「離」は、型から離れ、自分なりの体系を創り出していく段階です。なかでもとくに重要なのは「守」の段階、基本の習得です。一流のプロフェッショナルと言われる人ほど、基本を大事にします。コミュニケーションにおいても同様です。

 質問力を高める
 コーチングの質問は、相手の思いや考えを引き出したり、深めるために行います。正しい答えを引き出すために質問するのではなく、相手に考えてもらうために質問を行います。それが本人の自立にもつながっていくからです。
 質問の種類には「一番大切なことは何ですか?」などの相手が自由に答えられる〈拡大質問〉(開かれた質問)と、「Aでよかったですか?」などの答えが1つしかない〈限定質問〉(閉じられた質問)があります。
 効果的な質問は、具体的+5W1Hを使います。ただし、「なぜ、どうして」の過去・否定形の質問は相手が責められた感じを受けやすいので、「何」「どのように」の未来・肯定形の質問を使うとよいです。また、「何が悪かったのか」などの問題に焦点をおいた質問では言い訳や責任転嫁を引き出しやすく、「次回はどういう結果を目指すのか」などの解決に焦点をあてた方が成功に意識が向かいやすくなります。

 質問力の本質
 質問力の本質的なポイントは、相手に興味・関心を持つことです。「相手は何を感じているのか、思っているのか」と、相手に対して好奇心を向けることで、質問は自然と生まれてきます。また、質問がうまくなるコツは、ふだん自分にどんな質問をしているかに気づくことです。なぜなら、自分自身に使っている質問を相手にも使うからです。自分に対する質問の質を高めることが質問力を磨くことにつながります。

 日々の積み重ねが大事
 人生は日々の積み重ねでできています。今回の研修で学んだことをひとつでも意識し、1日1ミリずつ改善することで、結果的には大きな成果を生むことになります。そして、大事なことは、やり方よりもあり方です。単なるスキルやテクニックだけでは、人は動きません。「あなたがどんな人であるか」、人柄や心構え、考え方が相手に影響を与えます。自分自身のあり方を大事にしながら、日々小さなことでもいいので、今日から実行して変化につなげていただきたいと思います。
 今回の研修では、メンバーをチェンジしつつ2人1組に分かれて、いくつかの質問演習を行いながら進められました。

 4月から、75歳以上を対象にした後期高齢者医療制度(長寿医療制度)がスタートし、そのネーミング、これまで被扶養者であった人にかかる保険料、年金からの天引き徴収などに批判的な意見が多く、話題になっています。
 しかし、その背景には、高齢者の年齢が高くなるにつれて病気になるリスクが高くなり、老人医療費の増加をまねくという問題があります。このままでは医療保険制度がもたないことから、現在、医療制度改革が進められています。健保連では、安易な財源負担の転嫁や財政調整、制度の一元化・一本化に流されないよう、本部に特別委員会を設置し対案を打ち出すこととしています。
 一方、4月から特定健診・特定保健指導が始まりました。このうち、各都道府県単位で結ぶ特定健診の集合契約Bについて、大阪は契約を締結していますが、全国的にはできていない県もあります。他府県に工場や支店があったり、扶養家族が住んでいるケースは多く、その方々に特定健診を受けていただくために、早急な契約の進展が望まれています。また、特定保健指導の契約はこれからという状況になっています。
 特定健診・特定保健指導は5年間かけて定着させるとされ、今年度が初年度、スタートが肝心です。折から、保健指導についてのいろいろなアドバイスをいただくことを含めて、活躍していただきたいと期待します。