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楽しくてためになる健康教室

〜 上手に行動変容を導くコツ 〜 |
12月10日、薬業年金会館で健康教室を開催。京都医療センター臨床研究センター予防医学研究室 研究員 岡崎研太郎氏が「楽しくてためになる健康教室〜上手に行動変容を導くコツ〜」をテーマに講演をされました。前半は健康行動と行動変容について、後半は集団健康教室実践の紹介をしていただきました。 |
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これだけは知っておこう(健康行動と行動変容について) |
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岡崎研太郎氏 |
一般的に、食事や運動などの生活習慣を変えるのは、なかなか難しいようです。たとえば、糖尿病患者さんのセルフケアの実行度をみると、食事療法60%、運動療法50%、血糖自己測定80%、薬の内服93%、インスリン自己注射97%となっています。 |
健康行動の実行度は固定されたものではなく、変化しうるものです。また、食事療法はできないが運動療法ならできるというように、ある行動ができないからといって、すべてできないというわけではありません。さらに、結果がともなわないからといって、行動ができていないとは限りません。体重、腹囲、血圧、血糖値などの数字だけではみえないものがあります。また、興味深いことに、健康行動ができていない人ほどそのことを心理的負担と感じているのです。
健康行動に影響を与える要因として、感情、考え方などの心理的要因、医療者患者関係、家族、友人などの外的要因、血糖値、QOLなどの結果要因があります。「わかっちゃいるけどやめられない」というように、知識だけで行動を変えることは難しいのです。
健康行動はまず、感情、信念などの意識が変化し、次いで行動が変わり、最後に検査データなどの結果が変化します。ですから健康教室では、参加者から思いや考えを聞き出す技術、すなわち「質問力」が大切になります。 |
やる気を引き出すには「自信」と「重要性」を高めることが必要です。自信を高めるには、過去に他のことでうまくできた成功経験や、人の成功をみて自分もできそうに思う代理経験の活用、できたことをほめる賞賛などが有効だとされています。一方、重要性の低い人には、動機付けが重要になります。
対象者がどの程度、行動を起こしているのかは変化ステージのモデルを用いると理解しやすいでしょう。変化ステージとは、人の行動は前熟考期(無関心期)、熟考期(関心期)、準備期、行動期、維持期の段階を経て変化していくとする健康行動理論です。個人個人のステージに合わせた介入法を用いることでより効果が上がるとされています。また、このモデルは介入成果の評価に使うこともできます。 |
あなたは、どのような健康教室を目指していますか?一方的に難しい言葉を使って講義をする、つまらない教室では参加者が眠くなります。楽しくてためになる健康教室を開催するには、時間帯や言葉のわかりやすさ、部屋の明るさ、参加者の配置などに注意することが必要です。ただ単に読んだり、聞いたりすることよりも、実際に発言して実行したことのほうが記憶に残りやすいことがわかっています。一般的で曖昧な言葉や一方的な説明、たとえば「体重を減らしたほうがいいですよ」「食事に気をつけましょう」などの指導用語で行動が変化する人は少ないようです。また、健康教室の参加者を増やすには、教室のタイトルや、広報チラシの工夫なども重要になります。
楽しくてためになる健康教室を行うコツの一つは、前半で動機付けをし、後半に具体的な情報提供をすることです。興味を引くようなツール(教育媒体)をうまく活用し、知識よりも参加者が感じること、考えることを重視しましょう。一方的な話にならないように、参加者からもどんどん発言を引き出しましょう。目標設定の際は、具体的で小さな目標から始めたほうが達成されやすいことがわかっています。 |
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