広報誌「かけはし」
 
■2007年11月 No.434
時評

許されない「肩代わり案」
─ 拝啓 舛添厚生労働大臣様 ─


 「社会保障費抑制のため、極めて筋の悪いこともしないといけなくなっている」と、舛添厚生労働大臣がぼやいて見せたと聞いている。
 被用者保険間の財政調整案は、平成20年度予算編成に課せられた2、200億円の社会保障費削減策として、急に浮上してきた。これは、政管健保への国庫負担の「肩代わり」として、健保組合から年間1、900億円、共済組合から1、000億円を負担させ、政管健保の保険料率の引き下げ財源に700億円を振り向けるというものである。
 この財政調整案は、国の審議会など議論を経ないで唐突に提案されており、まさに安易な帳尻合わせの国庫負担削減策といわれても仕方ないものだ。
 国は、被用者保険等保険者間の格差解消であると説明しているが、それぞれの保険者間の報酬や年齢層格差は当然存在するし、基本的にはそれぞれの保険者が、自ら努力をするべきものである。現に健保組合間での格差もあるが、自主・自律を基本にいろいろな運営努力を積み重ね、その成果により現在があるといえる。
 平成20年度から新たな高齢者医療制度で後期高齢者支援金や前期高齢者納付金、そして特定健診・特定保健指導の実施など、健保組合にも従来にも増して負担が重くのしかかってくる。そんな時期に「国が責任を放棄したものを健保組合、共済組合だけに負担を押しつけるのか」説明がつかないんじゃないですか。舛添大臣!!
 ところで、国民負担率というものがある。ご存じと思うが、国民の租税負担と社会保障負担との合計の国民所得に対する比率である。
 ある資料によれば、スウェーデン70%、フランス61%、ドイツ51%、イギリス48%、アメリカ32%、日本は40%。このなかで日本に近い数字のイギリスを見てみると、人口は日本の1/2、医療費も1/2であり、医療費の財源は税金で賄い、国民すべてに対し患者負担なしである。
 日本の場合は保険料と一部負担金(原則3割)である。規模や医療保険制度、財源の違いがある。イギリスの医療制度改革のキーワードは「患者主導に基づく費用効率化」である。日本の医療制度改革はどうか?新たな高齢者医療制度が自己負担増の凍結などここにきて迷走している。
 政府は巨額の債務残高をかかえており、年金問題をはじめ社会保障政策がガタガタだ。理屈にあわない被用者保険間の財政調整案なんかに固執せず、政府の信頼回復のためにも国民の理解が得られる施策を議論するべきではありませんか。
 舛添厚生労働大臣様。
  (M・K)