広報誌「かけはし」
  
■2007年10月 No.433

すこやかライフを目指す食生活について
─ 最新栄養学情報から
   
 9月11日、薬業年金会館で健康教室を開きました。この日は44組合、63人が参加、辻学園栄養専門学校教授 広田孝子氏(医学博士)から「すこやかライフを目指す食生活について—最新栄養学情報から」をテーマに講演を受けました。(以下に講演のポイント)
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広田孝子氏

 日本人のエネルギー摂取量と肥満者の状況について、約30年前と比べてみると、平均エネルギー摂取量は低下しており、むしろ肥満者が少なくなるような食生活をしています。男性の肥満者は5%強増えていますが、女性の肥満者は減っており、このような現象は先進国では稀なケースです。
 問題はエネルギー摂取の中身で、脂質からのカロリー摂取がかなり増えています。また、アルコールによる摂取エネルギーも増え、ビタミンC、食物繊維は減ってきています。
 

4つの因子“死の四重奏”

 日本でのメタボリックシンドロームの考え方は、WHOや欧米とは若干異なり、上半身肥満を中心においています。上半身肥満の人は、インシュリン抵抗性になりやすく、高血糖、高脂血症、高血圧に導かれ、この4つがそろうと“死の四重奏”と呼ばれますが、いつ心筋梗塞、脳卒中、動脈硬化などの発作が起きてもおかしくない状態になってしまいます。
 “予備群”を含めたメタボリックシンドロームの割合を男女別にみると、たとえば40歳代の男性で半数近くおり、女性より男性の比率が高くなっています。それは、死の四重奏のリスクファクターをもつ年代が、男性は30歳代から、女性は遅く50歳代から増加するからです。この差は疾病リスクを抑える働きがある女性ホルモンによるからでしょう。
 

肥満を防ぐ食生活

 お腹の脂肪を減らすには、@エネルギー摂取量を減らすことA精神的ストレスをうまく解消するための方法を見つけることBエアロビックな運動などによりエネルギー消費を図ることが大切です。カロリー摂取量を減らすには、食品によるカロリーの違いを考えておくこと、さらに、油の使い方や調理方法によってもカロリー摂取量が変わります。
 

スローフードのすすめ

 糖尿病対策で強調したいことは、カロリーコントロールと食物繊維摂取です。食物繊維はかぼちゃ、大豆の煮物など伝統的な日本のスローフードに多く含まれています。また、ごはんより胚芽米や赤飯、パンよりライ麦パン、うどんよりそばというように主食により大きな違いが生じます。
 高脂血症(高コレステロール)対策にはEPA、DHAが多い青背の魚をおすすめしたいと考えます。高血圧を予防するには塩分・カロリー・体重のコントロールが重要です。カリウム、マグネシウム、カルシウムをたくさんとることによりナトリウム排出効果が高まります。
 

ファーストフードにひと工夫を
 ファーストフードの栄養成分を分析すると、各種ミネラルやビタミン類の不足がみられます。改善策として、たとえばハンバーガー+ポテト+コーラの場合、コーラを牛乳に変えるだけでかなり改善します。のりや豆類を加えるのも一策です。
 
骨粗鬆症を防ぐ

 日本女性の平均寿命が世界一長いのに、健康寿命が短いのは、骨粗鬆症がひとつの要因と考えられています。骨粗鬆症により骨折を起こすと寝たきりや、認知症になりやすく、とくに寝たきりから認知症につながる大腿骨けい部骨折は、この20年間で5倍も増加しています。高齢になっても高い骨密度を保つためには若いときから、食品からのカルシウム摂取と運動が大事です。たとえばカルシウムの吸収率が高い牛乳、チーズ、ヨーグルトをとりましょう。
 最後にまとめると、お酒、甘い物、脂肪や塩分の多量摂取、喫煙、運動・睡眠不足・ストレス…。これらを改善すれば、健康寿命が長くなりクオリティ・オブ・ライフ(生活の質)の高い、幸せな生活がより長く送れるのではないかと考えます。