広報誌「かけはし」

■2007年8月 No.431

事 業 報 告 の 概 要

1 健康保険組合をめぐる情勢

  平成18年度は、「平成の大改革」である医療制度改革関連法が5月18日に衆議院で可決、6月14日に参議院で可決し成立した。改革関連法のうち健保法等では、国民皆保険を堅持し、医療保険制度の持続的・安定的な運営の確保を目的に、新たな高齢者医療制度の創設をはじめ、医療費適正化の推進、保険者の再編・統合などの施策が、平成18年10月を皮切りに平成24年4月まで順次施行されることになった。
 今回の改革関連法は、健保組合の事業運営に大きな変革をもたらすものであり、厳しい財政運営を強いられることも予測されるなか、健保連・健保組合がより絆を強め、連帯してこの難局を克服していくよう、改革関連法の本格的施行に備えて円滑に対応できるよう諸事業に取り組んだ。
(1)4月14日の第171回臨時総会で、健保連会長に福岡道生氏が再選された。福岡会長は就任の挨拶で「医療制度改革関連法案には見過ごすことのできない大きな問題が含まれており、早期見直しや施行時に健保組合の意向が反映されなければならない」と強調し、その実現に向けて強力な要請活動を展開する決意を改めて表明した。
(2)政府の「社会保障の在り方に関する懇談会」は、「自助」を基本に「共助」が補完し、「公助」を最後の拠りどころとする社会保障制度の将来像を提言、5月26日に最終報告を提出した。その内容は、社会保障給付費の抑制や需要の縮小、また年金・介護・医療改革を踏まえた給付と負担の将来推計を織り込み、骨太方針06に反映している。
(3)医療制度改革関連法成立に伴う健保連の主張
 改革関連法成立を受けて、6月14日健保連は会長声明で、今回の改革関連法は改革の実現に向けた一歩であり、これまで要請してきた内容の一部が附帯決議に盛り込まれたことを評価する一方、多くの課題が残っていることを指摘し、支援金等の負担の歯止め措置、制度運営への費用負担者の参画などの実現と、法の附則に明記された制度見直しの早期実現を求めていくこととした。
(4)17年度健保組合決算は、経常収支差引額で2933億円の黒字となったが、これは法定給付費が3.8%伸びたものの、制度改正に伴う老健拠出金の減少により、支出総額が微増にとどまったことによる。しかし、18年度予算では、1091億円の赤字見通しとなっており、20年度からの高齢者医療制度創設に伴う支援金などの新たな負担増から、今後も予断を許さない状況にある。
(5)安倍内閣発足、厚労相に柳澤伯夫氏就任
 「美しい国創り内閣」を標榜した安倍内閣が9月26日スタートした。柳澤厚労相は、就任挨拶で、増大する社会保障費をどのように改善していくかを課題とし、社会保障の一体改革の継続が不可欠であると強調、社会保障制度の充実と強化に取り組む姿勢を明らかにした。
(6)18年度版 厚生労働白書
 人口減少局面を迎えるなか、地域と職域が社会保障制度を支えるとし、「公的なセーフティネット」と「地域の支え合い」「職場の見直し」の三者の取り組みによる「支え合いの循環」が新しい社会を構築すると提言した。
(7)平成18年度健保組合全国大会を開催
 11月20日に開催された健保組合全国大会では、「次世代につなぐ安心・納得の医療制度へ」を副呼称として
@IT化推進による患者中心の医療の実現 A特定健診・特定保健指導に対する国の適切な支援の実施 B実効ある高齢者医療制度の実現と医療費適正化の推進 C保険者機能が発揮できる社会保険方式の堅持
の4項目を全健保組合の総意として決議した。
(8)健保組合事業運営基準の改正
 厚労省は平成19年2月1日、健保組合事業運営基準を改正、健保組合が事業運営で遵守すべき事項を「健康保険組合事業運営基準」に、組合独自の判断で実施する事業の適正水準や留意点を「健康保険組合事業運営指針」に整理した。
 両者が混在していた従来の運営基準を大幅に見直した内容となっている。
(9)IT化の推進
 「健保組合IT化基本構想」プロジェクトチームでは、平成18年7月に中間報告を行い、以降組合支援策を中心に協議し、平成19年2月16日の総会に最終報告し、本格的なシステム開発に着手することになった。
 IT化基本構想では、「ITを活用した保険者機能の充実・強化と加入者サービスの向上を目指して」との副題をつけて、優先課題は、@特定健診・特定保健指導の義務化への対応 Aレセプトオンライン化への対応と有効活用 B健康保険証カード化への対応(資格認証システム対応を含む) C加入者サービスの向上 の4項目とした。健保組合の理解と協力を得て、全組合の参加が強く望まれている。
 

2 大阪連合会の事業活動概要
 大阪連合会では、理事会や各委員会で活発な論議を展開するとともに、医療制度改革関連法の成立を受け、健保連の主張について各方面に説明し、理解を求めるなど全組合が一丸となって取り組んだ。また、健保組合の事業運営の変革に対応するIT化基本構想など、より円滑な事業運営について議論を深めた。
 

 医療制度改革関連法など、大阪連合会各健保組合が分担して
  大阪府選出国会議員へ要請活動

 大阪連合会では、医療制度改革関連法案が衆議院本会議で本格的に審議入りした4月中旬〜下旬にかけて、8名の国会議員に対して、健保連の基本的な考え方を説明し、今後の法案審議に対応していただくよう理解と協力を求めるとともに、医療制度改革の早期実現も重ねて要請した。
 また、11月20日の全国大会終了後、および11月下旬から12月上旬にかけて、10名の国会議員に対して、次世代につなぐ安心・納得の医療制度に向け、大会決議として採択したスローガンの実現を強く要請した。
 

 各種団体との意見交換等

 5月19日に関西経済連合会に対して医療制度改革関連や制度の一元化問題、およびレセプトオンライン化などについて大阪連合会の考え方を説明し、理解を求めた。
 また、8月31日には大阪府医師会と意見交換会を開催し、「健保組合のIT化基本構想」を説明、医師会からは「生涯を通じた医療と保健と福祉」と題した医師会の考え方が説明され、双方の考え方に対して活発な意見交換を行った。
   

 広報活動

 機関誌「かけはし」および「ホームページ」を通じ、緊迫する健康保険組合をめぐる情勢、医療制度改革関連法や健保組合のIT化基本構想および健保連の考え方や要請活動を掲載するとともに、大阪連合会の主要な事業活動の広報に努めたほか、会員組合の広報活動を支援するための広報研究会を開催した。
 

 組合業務支援活動

 健保組合役職員の資質向上と連帯感の醸成に有効な個人情報保護講習会、実務講習会、事務長研修会等を開催した。

 

 医療費適正化対策活動

  高額レセプトの点検・レセプト相談・法律相談等の諸事業を実施して医療費適正化を図り、会員組合の財政健全化に努めた。また、支払基金に対して事務連絡協議会を通じて審査など問題点の解決を要請した。

 

 健康開発共同事業推進活動

 「健康日本21」および「健康増進法」の趣旨を踏まえ、生活習慣病・メンタルヘルスに重点を置いた、健康に関する各種講座やセミナーを開設し、健康づくりに関しては、運動実技を交えた運動習慣普及のための健康講座や健康づくり運動講座を開催したほか、契約保養所・プール施設の利用促進・各種イベントの後援や協賛等、多方面からその推進を図った。
 また、保健師による保健指導は、各事業所を訪問し、健康相談・健康教育・健診関連指導等幅広く実施した。

 

 総合組合活動

 総合組合の財政事情について調査を実施し、有効活用を図った。
 

 その他の事業活動

 @平成18年度近畿地域懇談会(9月20日) 
 A平成19年度健康保険組合予算編成事務・レセプトIT化等説明会(1月18日)


 特別保健福祉事業推進助成事業
 

 保健師等保健指導推進事業

 保健師による保健指導の要請に対応し、29組合、延べ388事業所を訪問し、保健指導、健康教育等を実施した。 また、現場担当者との意見交換会、研修等を随時開催した。

 

 運動習慣普及のための健康づくり運動講座開催事業

 第1回 社会保険東大阪健康づくりセンター「ペアーレ東大阪」
 第2回 おおさか社会保険センター堺
 それぞれにおいて、健康運動指導士の指導により講義、運動実技、体力テストを実施し、延べ43組合、65人の参加を得た。

 

 「健康日本21」生活習慣病克服健康づくり事業

 3回にわたり、健保連大阪中央病院循環器科部長などに講師を依頼して、健康管理を中心とした講演会を実施し、延べ130組合、184人の参加を得た。


平成18年度大阪連合会収入支出決算概要へ