平成20年度からの特定健診・特定保健指導の事業を健保組合として具体的にどのように進めていくのか、今後のスケジュールも含め説明いたします。
医療費割合が高く死亡数が多いのは、生活習慣病で、とくにメタボリックシンドロームの高血圧・高脂血症・糖尿病からくるもので、この部分をいかに予防するかが、高騰する医療費適正化の鍵となるとの政策です。高齢者の医療の確保に関する法律により「標準的な健診・保健指導プログラム」(健康局)と、「特定健康診査等基本指針(案)」(保険局)が策定されました。政府のIT化の動きもあり、特定健診・特定保健指導では、今回初めてALLJAPANでの統一化を国が定め、検査項目と検査方法、結果や報告の電子的様式などが決まります。詳細な健診項目の追加は、健診機関の医師が判断する場合の基準と、その理由を保険者に報告することになります。
特定健診と質問票の結果から、特定保健指導の階層化判定を行い、健診の位置づけは病気の早期発見ではなく、メタボを予防する保健指導に重点が置かれました。
服薬中の者については特定保健指導の対象から外れ、主治医の元で管理されますが、特定健診の対象からは外れませんから、主治医の元での治療や指導の効果を、翌年の特定健診結果で保険者としてみることになります。
健保組合と事業主との連携・協力体制により、被保険者については、労働安全衛生法に基づく定期健診結果のうち、特定健診項目の結果を事業主から健保組合がもらうことで、特定健診を実施したとみなせるので、事業主健診の委託機関は、特定健診のアウトソーシング基準に沿ったところを選定することが大事です。健保組合にとって、事業主健診を自己都合で受けない人や、事業主健診を実施していない事業所も存在すること、また任継・特退被保険者は被扶養者と同様に特定健診を実施するか等の検討課題もあります。
被扶養者については、健保組合の保健事業以外で受けているパート先での健診・ドック・住民健診などの結果をもらえれば、特定健診を実施したとみなせますので、その周知と結果をどのように受け取るかの工夫が必要です。
住民健診の基本健康診査は20年度から特定健診になりますが、がん検診・骨粗しょう症・歯周病健診は20年以降も住民健診として残りますので、健保組合では保健事業全体を見直し、住民として今後も市町村で受けられるものは活用していただくことも一方法です。
特定健診は契約せずに償還払いでどこでも自由に受けてもらう方法もありますが、一旦は全額自己負担となりますから、受診率が上がるかどうかはわかりません。事業主健診のスキームを活かして契約する場合は、被扶養者も受けられるかどうかは、事業主側の協力が必要となります。
被用者保険の被扶養者が、地元の市町村で特定健診・特定保健指導を受けられるように、現在国では集合契約を検討していますが、市町村が被用者保険の被扶養者を受け入れてくれるかどうかが不明のため、結論はまだ出ていません。集合契約の場合、結果および決済データを代行機関(現在診療報酬支払基金が名乗りを上げている)を通すことになりますが、その事務手数料がどれくらいになるかも、集合契約にのれるかどうかの判断材料です。
特定健診の料金については、従来からの事業主健診や老人保健法の基本健診(住民健診)の項目は決まっているにも関わらず、料金はさまざまです。特定健診ではある程度の料金に落ち着くとは思われますが、健保連としては、できるだけ安価でかつ良質なサービスであることを目指しております。特定保健指導については、メニューや方法、料金体系などかなり複雑になると思われますが、効果的かつ効率的に特定保健指導を実施するためには、職域保健として特性に応じた工夫が必要となります。
1月に厚生労働省健康局が特定保健指導実施事業者のエントリー調査をした結果、7千件あったそうです。多くは従来の健診機関や医療機関ですが、新しいビジネス展開として今までにない業界が入ってきているようです。安衛法にもとづく従来の保健指導は事業主の努力義務ですが、被保険者の特定保健指導を実施する場合、健保組合と事業主側の連携と協力体制の構築が非常に重要となってまいります。
特定健診・特定保健指導に関する研修会は、都道府県、保険者協議会、日本看護協会などの職能団体、健保連をはじめとする保険者団体で開催されますので、積極的に参加していただきたいと思います。
|