広報誌「かけはし」
 
■2007年4月 No.427

 

 3月7日、平成18年度第2回保健師連絡協議会総会が健保連大阪中央病院で開催され、平成19年度事業計画案と予算案について承認されました。総会後にはNPO法人 J.POSH 副理事長・事務局長の松田寿美子氏による特別講演会「乳がん〜産業看護職としてできること〜」が行われました。


 総会は、鮫島真理子会長の開会の挨拶に続き、来賓の三菱ウェルファーマ健康保険組合の野口常務理事が挨拶。野口常務理事は、少子高齢化、2007年問題について触れられたあと、保険者に対するメタボリックシンドロームの予防対策を中心とした特定健診・特定保健指導の義務化を実施・定着させる準備の時点ですので、大阪連合会、各健保組合と連携をとる必要がありますと述べられました。
 議事は、議案第1号でダイハツ健康保険組合の玉木副会長から「平成19年度事業計画(案)」の説明があったあと、議案第2号で大阪連合会の吉田事務局長から「平成19年度予算(案)」が提案されいずれも賛成多数で可決。総会後、大阪連合会の置田専務理事より「健保組合をとりまく情勢報告」(別掲)がありました。

 


鮫島真理子会長

 

特 別 講 演 会

乳がん 〜産業看護職としてできること〜
 
 

NPO法人 J.POSH
 副理事長・事務局長
松田 寿美子氏

   乳がんは女性のがんのトップ
 

松田 寿美子氏

 日本人女性が最もかかりやすいがんが乳がんです。日本女性の22人に1人が乳がんにかかるといわれています。30代から40代にかけて増加し、ピークは40代後半から50代前半。年間の死亡者数は増加の一途をたどり、現在では1万人を超えています。これは年間の交通事故死亡者数を約3千人上回っていることになります。20歳を過ぎたら乳がん年齢。「若いから」といって安心はできません。早期発見・治療すれば「ほとんどが治るがん」で恐れることはありません。
 早期発見のためには、マンモグラフィー検診などの乳がん検診を定期的に受けることが大切です。乳房に異常を感じたら、自己判断をせずに乳腺外科、乳腺科、外科の乳腺外来など乳腺の専門科を受診し、そこにいる乳腺の専門医の診察を受けましょう!! 

    乳がん検診
 

 検査には視触診、エコー検査、マンモグラフィー検診など大きく分けて3つあります。とくにマンモグラフィー検診との併用検診は、視触診・エコー併用検診に比べて、乳がん発見率が高い結果となっています。
 マンモグラフィーは乳房専門のレントゲン検査です。透明な圧迫版で乳房をはさみ、薄く均等に広げ、上下方向から1枚、左右方向から1枚撮影します。視触診、エコー検査では分からないような早期の小さな乳がん、しこりをつくらない乳がんを白い影(腫瘤影)や非常に細かい石灰砂の影(微細石灰化)を見つけることができます。
 定期健康診断での胸部レントゲンや消化器のバリウム検査のように、マンモグラフィー検診を普及させ受診率を大幅にアップさせることで、乳がん死亡者数を現在の6割程度まで減少すると推計されています。医療費削減で経済効果があるにもかかわらず日本の受診率は10%前後と市民検診、企業検診での受診率が低く「私は乳がんにならない」「乳がんは他人事」と思っている人が多いのも現状です。 

    ピンクリボン運動
 

 ピンクリボンは、アメリカの乳がんで亡くなられた患者の家族が、「このような悲劇が繰り返されないように」と願いを込めて作ったリボンからスタートした乳がんの啓発運動のシンボルマークであり、乳がんに対する理解と支援のシンボルマークです。
 ピンクリボン運動は、1980年代にアメリカでスタートし欧米を中心に、行政、市民団体、企業などが、乳がんの早期発見の大切さ、乳がんの正しい知識を知ってもらうために、イベント開催やピンクリボンをあしらった商品を販売し利益の一部を財団や研究団体に寄付をするなど、それぞれの立場でさまざまな活動を積極的に行っています。その結果マンモグラフィー検診が普及し、欧米では乳がんによる死亡率が1990年頃から低下してきました。
 ここ数年、日本でもピンクリボン運動が盛んになってきています。
 乳がんは女性だけの問題ではなく、社会全体の問題として考えていかなければいけません。働く女性や男性社員の愛する女性たち(妻、母、娘、姉妹、友人等)が健康であることは、働く女性・男性社員の心の健康につながります。また関わる人たちの心身の健康がなければ企業は成り立ちませんし、ひいては日本の生産力、経済力にも影響します。
 一個人としてはもちろんですが、社内でのオピニオンリーダーの立場にある皆さまには、側面からピンクリボン運動を推進していただきたいと思います。
 NPO法人 J.POSH(日本乳がんピンクリボン運動)の合言葉「受けようマンモグラフィー検診 乳がん早期発見で笑顔の暮らし」のもと、あなたとあなたの愛する人を乳がんから守るために、原点に戻って考えましょう。
 乳がんで悲しむ人をなくすこと、それがNPO法人 J.POSHの願いです。 

 

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 健保連本部が実施を予定しているものに、特定健診・特定保健指導のオンラインによるデータ管理があげられます。保健指導等の業務処理と同時に各健保組合から集めた健診データの分析が可能になります。
 保健事業を中心に、健康寿命をのばすことで充実した老後の人生を送ることは、健保組合の大きな目標となっていくのではないでしょうか。時間はかかりますが、日常生活についての行動変容は大切な事業です。保健指導で、本人の意思に反して生活を改めることは難しいですが、繰り返し本人の健康寿命をのばすために自信を持ち、厳しく、ときには笑いあいながら、有効な保健師の保健活動をお願いしたいと思います。
 健保組合をとりまく環境が変化しています。保健指導が大変重要な地位にありますので、皆様の力で健保組合の被保険者、家族の方をよりよい方向へ導いていただきたいと思います。