医療制度改革関連法は、本年6月に成立し、段階的に改正法の施行が行われています。
そのなかで、高額療養費については10月から加入者の自己負担限度額の見直しがありました。
高額療養費払いは、原則償還払いとしていますが、組合により自動払いをしているところなど取り扱いはまちまちです。
この高額療養費の支払い方法は、平成19年4月から入院患者に限り償還払いではなく『高額療養費の現物給付化』となります。
『高額療養費の現物給付化』はすでに70歳以上の者に入院医療費の自己負担限度額を超えた額を現物給付化しており、それを今回の改正で70歳未満の者にも拡大をする。窓口では、高額療養費の自己負担限度額のみを支払えばよいため、入院患者は大きなお金を用意しなくてもよくなるというものです。
高額医療費資金貸付制度もありますが、貸付金額に限度があり、また貸付に時間がかかる等の問題が解消され、入院患者には大きな利便が図られることとなります。
しかしながら今回の法改正のなかでは、検討事項が多くあり、国会でも大きな争点とはなりませんでしたが、保険者にとっては財政に影響しかねない問題です。また、次のような問題も懸念されます。
@医療制度改革の重要な柱である「医療費の適正化対策」の施策のひとつである「平均在院日数の短縮」が図れるのか?
A患者が自己負担限度額のみの支払いで済むので、高額の医療を受けた認識が欠如するのでは?
B入院患者の現物給付化後も世帯合算や多数該当の高額療養費はいままでどおりの事務処理は残る。
以上3点のうちAについては、医療費通知で被保険者には医療に要した金額を知らせていますが、いったん医療費の総額を確認し、自己負担の限度を超えた金額の返還を受けるのとでは、被保険者の認識がおおいに異なるところです。これでは高額療養費制度が導入された際、償還払いの取り扱いを原則とした経緯が見失われてしまいます。加えてBでは事務処理軽減とはなりません。
しかしもっとも危惧されるのは@の問題で、医療費の適正化を目指した今回の改革のなかで、入院患者の優遇措置を講じた結果、「平均在院日数の短縮」に影響を与え、目的が達成できなくなるのではないかということです。
今回の措置は後戻りができず、保険者としては医療費適正化に向けた努力を一層必要とすることを認識しなければなりません。 |