広報誌「かけはし」
  
■2006年9月 No.420

 

 

 9月1日(金)健保連・大阪連合会は、「医療制度改革と今後の課題」をテーマに、自民党の丹羽雄哉衆議院議員(社会保障制度調査会会長)と藤井基之参議院議員(自民党国会対策委員会副委員長)による時局講演会を開催した。

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(丹羽議員講演要旨)
 

丹羽議員

 今回の医療制度改革は、今後の少子高齢化・人口減少社会でも世界に冠たる国民皆保険制度を堅持することを最大の目的としている。
 まず、高齢者の自己負担増問題。高齢者は社会的弱者イコール経済的弱者というのは考え直していかなければならない。70歳以上の現役並み所得者の自己負担割合を10月から、2割から3割に引き上げ、世代間負担の公平のためにも高齢者は所得に応じた負担をする必要がある。また、医療資源を有効に活用する方策として、療養病床の再編成に着手する。医療と介護を合わせ現在38万床ある療養病床を15万床の医療療養病床に集約させることが、「医療改革の1丁目1番地」と認識している。
 20年度から創設する高齢者医療制度は、75歳以上の後期高齢者は独立させて、75歳以上の方々に運営の責任を取っていただく。後期高齢者の人数が若人の人数に対して多くなるにつれて、4割の支援金の割合が少なくなる歯止めの措置を設けた。これにより、健保連の強い主張である老人保健拠出金に歯止めをかけることを実現した。65〜74歳の前期高齢者は率直に言って、従来の老人保健拠出金制度を踏襲した財政調整となり、退職者医療制度も経過的に残さざるを得ない。
 前期高齢者に対する私の考え方は、65〜74歳は2割負担、75歳以上が1割負担、65歳未満が3割負担だったが、小泉総理の鶴の一声で、65〜69歳が3割、70〜74歳が2割となり負担の面で分断された。
 前期高齢者が設けられた位置づけを考えると、公費は前期も5割といきたいけど、1割でも2割であっても投入すべきだ。そうしないと、何のために前期高齢者制度を設けたのか、ということになる。
 一方、政管健保が社会保険庁から分離される。これまで全国一律82‰の保険料だったが、今後は都道府県ごとに料率を設定する。県別料率より高い組合は、さらなる保険者機能を強化する必要がある。
 最後に、我が国の社会保障制度は良質な労働力を確保するという企業を中心として、事業主からも応分の負担をいただくことからスタートした。事業主の協力なくして、我が国の社会保障は成り立たない。

 

 大阪連合会 小山理事(ナショナル連合常務理事)より、「前期高齢者医療制度にも相応の公費負担を投入すべきである」と強く要望したことに対し、丹羽議員は、「実現できるよう努力していきたい」と応じた。

 
(藤井議員講演要旨)
 

藤井議員

 健保法等改正案の成立過程を中心とした国会審議の経緯、さらに少子化問題や税制問題も含め幅広い話があった。
 今回の医療制度改革における最大の焦点は、高齢者医療制度を新たに構築することにあった。重要法案は地方公聴会や利害関係者の意見を聞いて、国会の審議に深みを増していく。健康保険制度を変えようというときに当然見解を聞かなければならない人がいる。保険者団体は、医療団体はどうかと聞くのは当り前だ。保険者機能を高めてもらう法律なのに、保険者団体である健保連代表が衆院の参考人質疑に招致されなかったこともあり、国会審議に反映されなかった。参院では与党推薦で保険者団体の健保連代表を参考人招致し、健保連の意を受けた国会審議もあって、与野党全会一致で附帯決議の採択で結実したと評価している。
 

 大阪連合会 山本副会長(兼松連合常務理事)から、「医療制度改革大綱のなかで制度の一元化を目指すとなっているが、国民皆保険制度を維持するためにも保険者機能が発揮できる健康保険組合は必要不可欠と考えます。」との意見に対し、藤井議員は、「全国民が一つの保険になるというのは一つの考え方としてあるが、一元化は課題も多く簡単にはできないと考えている。」と述べた。