平成17年度は、高齢者医療制度をはじめとする医療制度改革の考え方が、関係各機関から相次いで公表され、議論を呼んだ。政府与党は、厚生労働省の「医療制度構造改革試案」を踏まえて、「医療制度改革大綱」を決定し、医療制度改革関連法案を国会に提出して、衆議院厚生労働委員会での厚労相の所信表明を皮切りに、審議がスタートした。
健保連では、「新・提言─新たな高齢者医療制度の創設を含む医療制度改革に向けての提言─(以下「新・提言」という)」を公表して広く世論に訴え、健保連の主張に添った、持続性のある安定した改革実現に総力で取り組んだ。
一方、健保組合の事業運営は、景況感が企業間、地域間などで、まだら模様にあることは否めず、また制度改革の行方や医療費動向の影響などにより、依然不安定な状況にあることに変わりはない。
|
|
医療制度改革論議の本格化を前に、健保連では「新・提言」に対する全健保組合の合意形成をめざし、北海道(4月8日)・大阪(4月19日)・東京(5月10日)など全国10カ所で、健保組合との意見交換を行う説明会を精力的に実施した。
|
平成17年度健保組合予算は黒字好転も依然厳しい状況 |
|
|
4月14日に発表された健保組合全体の経常収支は、16年度予算の344億円の赤字から、161億円の黒字へと好転したが、依然として5割以上の組合が赤字を計上するという、厳しい状況が続くこととなった。総報酬制や被保険者3割負担導入が黒字の要因だが、老健・退職両拠出金は、保険料収入の36.4%と高く、特に退職拠出金の増加が目立った。
|
|
|
7月22日、健保連は第169回総会を開催し、第10代会長に福岡道生氏を選出した。福岡会長は、健保組合を取り巻く情勢について、「危機的な状況にある」との認識を示し、医療制度改革の早期実現を強調した。
|
|
|
7月22日の総会で、18年の医療保険制度改革に焦点をあてた「新・提言」を正式決定した。「新・提言」は、
@医療保険制度の持続安定性の確保─医療費総額抑制の必要性・基本的考え方など─A医療保険制度体系─高齢者医療制度の創設、社会保険方式の堅持、保険者機能の発揮、患者中心の医療、IT化の促進など─B医療提供体制の効率化と質の向上─医療計画の充実、適正な保険診療の推進など─C診療報酬体系の見直し─簡素化・合理化の促進、出来高払いの是正、包括払い・定額払い方式の拡大など─の4本柱で構成、健保組合の意見・要望とWGなどの検討を踏まえたものである。
|
|
|
7月29日に公表した「平成16年度健保組合決算見込の概要」では、老健拠出金の減少などにより、経営収支差引額は3,061億円の黒字となったが、保険料収入に占める拠出金割合は、37.0%と高水準で推移するなど、依然として厳しい状況が続いている。なお、16年度の組合数は38組合減少して1,584組合となり、9年連続で減少したことになる。
|
|
|
10月19日、厚生労働省は「医療制度構造改革試案」をまとめた。試案は、「医療費の適正化」と「新たな高齢者医療制度の創設」を骨格とし、高齢者医療制度では、被用者保険と国保間の財政調整を拡大・強化する方針を打ち出すとともに、退職者医療制度の存続が明らかになった。
健保連では、直ちに会長声明を発表、「前期高齢者に対する財政調整の仕組みや退職者医療制度の存続は、到底受け入れられない」ことを強調し、75歳を境とした高齢者医療制度の創設案に反対を表明した。
|
|
|
健保連の病院情報検索サイト「けんぽれん病院情報─ぽすぴたる─」が10月20日にリニューアルオープンした。全国約9,000の全病院の機能、設備、専門性、手術件数などの施設基準情報を網羅したことが特色となっている。
|
|
|
10月31日、第3次小泉改造内閣の発足に伴い、厚労相に川崎二郎氏が就任した。川崎厚労相は記者会見で、小泉首相から医療制度改革を筆頭課題に、年金制度改革など6つの課題への対応を指示されたことを報告するとともに、厚生行政は多くの関係者や野党との調整が重要である、と抱負を述べた。
|
|
|
11月21日に開催された健保組合全国大会では、「拠出金制度の存続・改悪を断固阻止する総決起大会」として、@拠出金制度の存続・改悪の断固阻止A医療費総額の実効ある抑制B社会経済動向を反映した診療報酬の引下げC患者中心の医療の実現の4項目を全健保組合の総意として決議した。
|
|
|
12月1日、政府与党医療改革協議会は、「医療制度改革大綱」を決定した。新たな高齢者医療制度は、75歳以上の後期高齢者医療制度と、65歳以上74歳以下の前期高齢者医療制度を平成20年に創設。前期高齢者医療制度は、制度間の財政調整を導入し、退職者医療制度も存続する経過措置をも盛り込み、健保組合への負担偏重が懸念される構造となっている。
健保連では、会長声明で、不公平、不透明かつ複雑な制度などの問題点を指摘、大綱に基づく改革法案の作成では、こうした問題点を解消し、真に公平で持続性のある制度構築をめざすべきであることを強く訴えた。
|
|
|
政府は、2月10日の閣議で「健保法等改正案」と「医療法等改正案」を決定し、国会に提出した。医療保険制度の持続的・安定的な運営の確保を目的に、医療費適正化の推進、新たな高齢者医療制度の創設、保険者の再編・統合等を柱としている。
健保連は、即刻会長声明を発表、看過できない大きな問題点が存在すると指摘し、特に前期高齢者の財政調整制度は公費の投入が必要不可欠であることを強調するとともに、後期高齢者医療支援金などの保険者負担は、法的な位置づけを明らかにすることが必要だとし、国会の場で十分に審議し修正に臨むことを要望した。
|
中医協が18年度の診療報酬改定(3.16%引き下げ)を答申 |
|
|
2月15日、中央社会保険医療協議会は18年度の診療報酬改定の具体案をまとめ、川崎厚労相に答申した。改定率は全体で3.16%(診療報酬本体1.36%、薬価1.6%、材料0.2%)引き下げたのをはじめ、初診料の統一、後発品使用促進のための処方せん様式の見直し、領収証の無償発行、DPC対象病院の拡大などが実施されることになった。
健保連は、今回の答申について、患者の視点に立ったメリハリの効いた改定を織り込んでおり、評価する考えを明らかにした。
|
|
|
健保連では、「健保組合IT化基本構想(グランドデザイン)」を検討するため、新たにプロジェクトチームを3月に設置し、6月を目途にIT化の目的やテーマの設定をまとめることとした。基本構想は、政府の「IT新改革戦略」や厚労省の「保健・医療・福祉分野全般にわたる情報化のグランドデザイン」の動向を注視して、「保険者機能の強化」がIT化の最大の目標であることを明確化し、「医療の質の確保と向上」「医療保険業務の合理化」にも反映させることとしている。
|