広報誌「かけはし」
 
■2006年8月 No.419
時評

柔道整復師の施術に係る
療養費の適正化


 肩こり、筋肉疲労で柔道整復師に診てもらっている方は少なくないようである。
 柔道整復師は、外傷性疾患以外の施術をしてはならない。
 整骨院(柔道整復師)での施術は、「償還払い」を原則とする療養費の給付制度のなかで、例外的な取り扱いとして、保険者と柔道整復師の協定・契約に基づき、患者が自己負担分のみを施術者に支払い、施術者が残額を保険者に請求する「受領委任形式」により支給することとし、昭和11年から実施されて以来現在に至っている。
 会計検査院は、平成2年度から平成4年度まで柔道整復施術の実態を調査した結果を、平成5年12月3日厚生大臣に対し、@内因性疾患の患者に施術を行っているA多部位請求・濃厚施術回数B取り扱い患者数が多いCはり・きゅう振り替え請求があったと報告している。
 これらの問題点を解決するため@柔道整復師、保険者等に対し受領委任制度の趣旨を周知徹底させることA審査基準を明確にすることB施術所に対する指導、監査の基準を明確にするとともに、その体制を整備することなど、是正改善の措置を求めている。
 これらを踏まえ、柔道整復師の施術に係る療養費の適正化を図るため、「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項」(平9・4・17保険発57号厚生省保険局医療課長)が通知された。通則に施術のルールが次のとおり明記されている。
@脱臼または骨折に対する施術については、医師の同意を得たものでなければならない。また、応急手当をする場合はこの限りではないが、応急手当後の施術は医師の同意が必要であること。A療養費の支給対象となる負傷は、骨折、脱臼、打撲および捻挫であり、内科的原因による疾患は含まれないこと。B単なる肩こり、筋肉疲労に対する施術は、療養費の支給対象外であること。
 負傷によるものなら原因はわかりやすいが、負傷でないものなら内科的疾患によるものか、原因を診断しなければ、治療内容も異なってくる。医師ではない柔道整復師では、負傷によるもの以外は判断できないはずである。
 保険者は、基本的に保険ルールに従って請求があればルールに従って支払う。保険適用にするかしないかであり、肩こりを保険請求するのではなく、それは自費でやっていただきたい。
 養成校が乱立し、有資格者が激増し柔道整復師過剰時代である。結果として、患者の奪い合い、限りある財源は不足、過当競争は激化してきた。
 今月、架空、付増し請求により「受領委任の取り扱い中止」の行政措置があった。施術管理者のみの責任を問うことなく、開設者も含め不正額返還の法的手段を進めていただきたい。
 柔整業界としても、自分たちの仕事、生活を守るため自浄作用(自主規制)が必要と思われる。
 「受領委任払い」は、保険者と施術者に患者も加えて、三者の信頼関係のうえに成り立っている制度であり、それぞれが療養費を適正化する努力が必要である。

  (Y・T)