広報誌「かけはし」

■2006年8月 No.419
時評

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頭痛の正しい理解と対処法

 
山口三千夫氏


 7月20日、健保連大阪中央病院で「頭痛の正しい理解と対処法」をテーマに、山口クリニック院長山口三千夫氏による保健師連絡協議会研修会が行われました。


 頭痛には「こわい頭痛」と「こまった頭痛」があります。こわい頭痛は、ある疾患の症状のひとつであり、こまった頭痛は、それ自体が病気です。

こわい頭痛
 「くも膜下出血」は、脳動脈瘤破裂が主な原因で、生涯最悪といわれる突然の激しい頭痛・意識障害・首が前に曲がらない等の症状があり、CT検査や腰椎穿刺が必要となります。中年女性にやや多く発生しますが、3分の1は回復し、社会復帰ができます。「髄膜炎・脳炎・まれに脳膿瘍など、中枢神経系の感染症」の特徴は、頭痛のほかに急性の発熱・痙攣・意識障害、項部硬直などの症状があり、髄膜検査で蛋白増加・白血球増多・免疫学的所見・病原体の存在等があり得ます。
 「頭部外傷」には、血管が損傷して数時間で血腫ができ危険ですが、最も多いこわい頭痛は、慢性硬膜下血腫です。これは壮年男子の酒客に多く、軽度の受傷後1〜3カ月に起こり、頭痛のほかにマヒや痴呆がみられますが、CTで見つかり、脳外科的手術も有効です。他には頚椎捻挫や低髄液圧症などがあります。
 また、「脳腫瘍」「脳出血」「急性副鼻腔炎」などもあります。これらのこわい頭痛を見つけるために何より重要なことは、この1週間ほど…昨夜から急に…「いつもと違う頭痛だ」「急激に起こってきている頭痛だ」に注意することです。
こまった頭痛
 頭痛を主とするひとつの「びょうき」です。緊張型頭痛・片頭痛・群発頭痛などがあり、救命救急というよりQOL(Quality of Life)を重視すべき状態です。
 「片頭痛」は一症状ではなく、一疾患です。セロトニンの代謝にも関連し、三叉神経系・脳の血管・および全身の自律神経系に異常が起こる状態です。寝過ぎ・人ごみ・寝不足・週末・嫌な臭いなどで頭痛が起こる、眩しい・視覚前兆がある、強い頭痛発作と吐き気・嘔吐をともない、日常生活に支障があるものを片頭痛といいます。片頭痛の初発年齢の25%は12歳以前です。その他に小児の頭痛は全身のウイルス感染・脳腫瘍・片頭痛などがあり、安易に精神的頭痛と決めつけてはいけません。
 「緊張型頭痛」は、筋収縮(肩こり)・精神緊張(ストレス)が原因とされています。吐き気・嘔吐はなくても食欲不振はあり、締め付けるような・圧迫するような・頭が重い・何か張りついたような、などの訴えが多くあります。特徴は頭痛があっても生活には大きな支障はありません。一方、嘔吐があり体動により生活に支障があれば片頭痛です。
 「群発頭痛」は、1年に1回、約1カ月間続く激しい発作、1日に1回、約1時間続く一側の目玉の奥が抉られるような痛み、決まった時刻に激しい頭痛で目が覚める。─頭痛大学より─
 「頭部神経痛」は、強い肩こりと関連することがあります。また頭皮のウイルス性帯状疱疹は大変です。そして副鼻腔炎の場合もあり、これらQOLが重要です。
 頭痛への対処法は、火事の時と同じように、早めの水一杯が消火に有効といわれるように、タイミングがとても大切です。