広報誌「かけはし」
 
■2006年5月 No.416
時評

きめ細かな少子化対策を
―国民皆保険制度維持のためにも―


 わが国は急速に少子高齢化が進んでいる。これは、生活水準と医療技術の向上にともなう「長寿化」と、各家庭が生み育てる子供の数が減る「少子化」が進んだことによるものである。
 一般的に、社会の高齢化は総人口に占める高齢人口(65歳以上)の割合により、7〜14%が高齢化社会、14〜21%が高齢社会、21%以上が超高齢化社会と分類される。日本は、昭和45年に高齢化社会に、平成14年の時点で高齢社会となり、昨年の総務庁の推計では初めて20%に達し、いよいよ超高齢化社会に突入しようとしている。
 一方、わが国の年間出生数は、昭和48年の約209万人以降減少傾向にあり、平成16年には約111万人まで減少している。また、厚生労働省が公表した平成17年度の「人口動態統計特殊報告」によると、女性の平均初婚年齢は27.8歳、第一子の平均出産年齢は28.9歳と、いずれも約30年前より約3歳上昇した。
 また、昭和50年に第一子を出産した母親の年齢別の割合では、30歳以上は全体の8.5%にすぎなかったのに、平成4年には20%を超え、平成16年には40.5%になった。少子化の要因とされる「晩婚化」と「晩産化」がはっきりと現れている。
 少子高齢化がわが国の社会経済に及ぼす主な影響としては、@労働力の減少により、経済成長が低下するA公的年金や医療保険などの社会保障制度は、世代間の相互扶助で運営されているため、現役世代の負担が増大するB少子化により、産婦人科、小児科や教育関連産業などの子供を対象とする産業の市場規模が縮小するなどがあげられる。
 このようななか、少子化対策として、医療制度改革では、@出産育児一時金を引き上げるA出産手当金については、支給額へ賞与を反映させるB乳幼児に対する患者負担軽減(2割負担)の対象年齢を3歳未満から義務教育就学前まで拡大するなどの見直しが予定されている。
 一方、民間企業や地方公共団体では、昨年4月に全面施行された「次世代育成支援対策推進法」により、種々の出産・育児支援策が実施されている。例えば、子供が生まれた従業員に対し、子供1人につき100万円を支給したり、事業所内に従業員用の保育所や託児所を開設したりしている。先般の春闘でも企業は出産育児支援策の拡充を打ち出した。不妊治療のための休暇・休職制度の導入も相次いでいる。
 新たに創設される高齢者医療制度は、医療費の適正化を目指す今回の医療制度改革の柱の一つである。我々健保組合にとってもその中身には多くの問題点が残されているものの、その重要性は十分認識している。
 しかし、わが国の医療や年金などの社会保障制度の基盤を揺るがそうとしている少子化について、国民皆保険制度を今後も維持・継続していくためにも国の一層のきめ細かな対策が是非必要である。

  (K・M)