広報誌「かけはし」
  
■2005年10月 No.409

喘息との付き合い方
   
 9月9日、薬業年金会館において「喘息との付き合い方」と題し、健保連大阪中央病院内科医長の武田悦子氏による健康教室が開催されました。
 
※写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます。

●原因は気道の慢性炎症

武田悦子氏

 喘息は気道の慢性炎症のために、気道狭窄を起こす病気です。主症状は繰り返し起こる咳や喘鳴、呼吸困難など。発作が治まれば気道狭窄は解消します。
 アトピー型の喘息ではダニやスギ花粉などの抗原の刺激によりリンパ球が活性化され、さまざまなサイトカインが分泌されます。それを介して好酸球が活性化し、組織障害性タンパクを分泌します。これによって気管支上皮の細胞が壊されはがれ落ちます。また肥満細胞からロイコトリエンが放出され、気管支平滑筋を収縮させます。

  
●生命にかかわる発作
   喘息の発作を繰り返すと気道の炎症が慢性化し、気管支壁の肥厚などを起こすリモデリングを招きます。これを予防するため、できるだけ軽症のうちから薬物治療を行い発作を防ぎます。発作時には、その程度を客観的に理解し、次にとるべき行動を知っておきましょう。重症発作にもかかわらず、放置していると生命にかかわる事態になります。注意すべきポイントは、発作の最中、しゃべれるか、横になれるか。発作が重くなると息苦しくて横になれず、起座呼吸になります。大発作が起こった場合、動けなくなるので救急車を呼ぶなどの対応が必要です。喘息死は、意外に重症の人より中等症や軽症の人に多く見られます。症状が軽くても油断は禁物です。
  
●自己管理で発作予防
 

 喘息治療の目標は健常人と変わらない日常生活を送り、小児の場合は健常な発育を保つ、発作の起こらない状態を作り、呼吸機能を維持する、喘息死の回避など。
 発作は一回でも少なくおこさないことが大切です。治療は抗炎症薬(吸入ステロイド)と気管支拡張薬の2本立てで行います。ステロイドは内服や点滴のように全身に投与するのではないので、副作用の心配はありません。気管支拡張薬テオフィリンやβ2刺激薬を使います。自宅で発作が起こったときには慌てずに気管支拡張薬を吸入し、痰を出します。症状が続く場合は我慢せず、早めに病院に行きましょう。喘息症状を起こす誘因には風邪や天候、疲労、ストレス、タバコなどがあります。室内塵やダニ、ペットの毛、カビ類、花粉などのアレルゲンを避け、環境整備に努めます。また、ピークフローメーター(肺機能検査)を使って気管支がどれくらい拡がっているかを自分で客観的に評価します。ピークフローの値によってステロイドの吸入量を増やしたり、気管支拡張薬をこまめに使う、あるいは病院に行くという判断をします。昔と比べると薬がよくなりましたので、病気を理解し、自己管理に努めることで、支障なく日常生活を送れるようになってきています。