平成16年度は、健保連にとって極めて厳しい情勢のなか、新体制がスタートしたが、全健保組合の協力のもと総力を結集して信頼回復と制度改革活動に取り組んだ。
健保組合の財政は、個々の健保組合では格差はあるものの、全体としては、一時的に小康状態を保っている。しかしながら、少子高齢化の急速な進行のなか、今後も予断を許さない厳しい状況が続くものと見込まれるので、制度改革の早期実現を図り、医療保険制度の安定に向けて、この難局を乗り切っていくことが、求められている。
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健保連では、5月10日に開催した役員改選の臨時総会で会長には千葉一男氏を、副会長には加藤幹雄氏と3健保組合を再選、専務理事に対馬忠明氏を選出した。
千葉会長は就任の挨拶で「未曾有の難局のなか、健保連の信頼回復と諸活動に総力を結集して、不退転の決意で取り組んでいく」と述べ会員組合の理解と協力を求めた。
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健保組合の平成15年度決算および平成16年度予算の状況 |
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@平成15年度決算は、総報酬制の導入や本人3割負担の実施などの影響で、経常収支は1、386億円の黒字を計上した。しかしながら、赤字組合は全体の4割を超え、老健・退職両拠出金の保険料収入に占める割合も依然40%を超える水準にあり、恒常的な財政不安要素の払拭には至っていない。
A平成16年度予算は、経常収支で276億円の赤字と前年度予算と比較すると若干の改善がみられるものの、赤字組合は5割を超え、解散による組合の減少や加入者数が3、000万人を割り込むなど、根本的な改善基調には程遠い状況にある。
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@7月28日、9回目の会合を開催し、厚労省は「基本方針」に則した改革の実現を目指した「今後の検討の方向(事務局案)」を提出したが、多くの委員が問題点を指摘、多くの疑問や不透明感が残るなか、批判的な見解も出され、今後の審議の難航が予想される状況となった。
A10月22日、平成18年の医療保険制度改革に向けた第2ラウンドの議論が開始され、医療費の適正化や国保における都道府県の役割の強化などについて意見交換を開始したが、最大の論点である高齢者医療制度の審議が大幅に先送りされたスケジュールについて、健保連は、早急に着手するよう強く要請した。
B11月30日、本来の検討事項の周辺問題である国保の国庫負担金の削減、混合診療の解禁、介護保険制度改革など予算編成にかかわる課題が優先審議されたことに対し、健保連は、本格的な改革論議を優先させる必要があるとの考えを示した。
C1月26日、財政運営の都道府県単位化や保険者組織など政管健保の改革を中心に議論されたが、健保連は、審議ペースの遅れに懸念を表明し実質的な審議を加速するよう要請した。
D3月4日、政管健保の改革をテーマに、厚労省が提出した「財政運営の都道府県単位化」のイメージ3案をもとに議論されたが、健保連など多くの委員が「保険者機能の発揮」を視点に議論すべきだと指摘した。
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9月22日に発足した、第2次小泉改造内閣で就任した尾辻厚労相は「難問が山積しているが、国民の信頼を得て、日本の社会保障のため一生懸命頑張っていきたい」としたうえで、社会保障全般の見直しの必要性を強調するとともに、医療保険制度改革では、国民皆保険を堅持し、持続可能な制度構築に努力すると述べた。
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平成16度健康保険組合全国大会は、「医療保険制度改革の確実な実現を目指して」として11月19日に開催し、@拠出金の廃止と医療制度改革の早期実現、A費用負担者の意向が反映される介護保険制度の実現、B良質で安心できる患者中心の医療の実現、C社会保険方式の堅持と保険者機能の強化、の4本をスローガンに掲げ、全健保組合の総意として決議した。
また、「医療・介護を合わせた制度改革の実現を目指して」をテーマに特別シンポジウムを開催。与野党の代表者が、会場の参加者との意見交換も踏まえ討議した。
大会終了後、本部および各都道府県連合会は陳情団を結成して、各政党国会議員や厚生労働省、財務省に対し決議の実現を強く要請した。
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個人情報保護法の全面施行(平成17年4月)に向けた対応 |
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レセプト情報や健康管理情報など、健保組合が持つ個人情報の保護に向けて、健保連では説明会を開催。各健保組合では職員への教育、被保険者へのPR、安全管理体制や業務処理方法の見直しなどに万全を期すべく、準備を進めた。
厚労省が策定した「健康保険組合等における個人情報の適切な取り扱いのためのガイドライン」では、レセプト情報などの適切な取り扱いのための規定を明記して、その遵守を要請している。
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3月25日、健保連は「新たな高齢者医療制度の創設を含む医療制度改革に向けての提言」を公表した。
平成18年度の医療保険制度改革への反映を目的に、健保連の基本的考え方を、4ワーキンググループの検討をもとにまとめたもので、65歳以上対象で別建ての新たな高齢者医療制度の創設や医療提供体制、診療報酬体系見直しなど、制度改革の広範な課題を網羅したものとなっている。
新提言の説明会は、全国10カ所で開催し、健保組合関係者との意見交換を踏まえ、改革の実現に向けた合意形成を目指すとともに、関係団体に理解を求めていくこととしている。
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