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冨吉勝美氏 |
PET(陽電子放射断層像)は当初、脳機能や心、人間の精神の動きなどを研究するために開発されました。商業ベースに乗るようになったのは1970年代のことです。
臨床PETには@放射性核種をつくるサイクロトロン、A断層像をつくるコンピュータによるPET装置、B画像を生み出す放射性薬剤の3つが必要です。これらはいずれも1970年代に飛躍的に発達しました。当初開発された放射性薬剤は半減期が5730年と長く、ベータ線放射のため生体画像には不適切でしたが、1970年代に、半減期が110分と短いポジトロン核種の放射性薬剤FDG(Fluoro-Deoxy-Glucose)が日本人の井戸教授によって開発されました。これを人体に投与すると、FDGはリン酸代謝を起こし、そこから放射線を出します。それを画像によって測定、異常を発見します。当初、これは脳の研究に使われていました。しかし、FDGががんにも取り込まれることがわかり、PETががんの診断に利用されるようになりました。FDGを使うと、短時間に全身のがんを検索することができます。現在はFDGのほぼ95%ががんの検索に、残りが脳と心臓の診断や研究に利用されています。PETの分解能は当初の10〜15ミリから、3〜4ミリ程度に向上、診断時間は薬剤の投与から検査まで2時間以内と短時間ですみます。がんの検出率も2・3%と非常に高く、有用性が認められています。 |