広報誌「かけはし」
  
■2004年12月 No.399

エイズの現状について
〜怖くないエイズ〜
   
 「エイズの現状について〜怖くないエイズ〜」と題し、健保連大阪中央病院健診センター室長の矢崎晴平氏による健康教室が11月24日、薬業年金会館で開催されました。

●増えるエイズ患者
 

矢崎晴平氏

 最近、エイズの報道が少なくなっていますが、エイズの患者、あるいはHIVキャリアはじわじわと増加しています。今後、爆発的増加が予想され、世界的にも危惧されています。
 アメリカでは1983年ごろからエイズが問題になって、急速に感染が拡大、89年頃にはアメリカ全土にまでまん延しました。しかし、94年頃から死亡率は急速に減少しています。その背景には、効果的な治療法が開発されたことがあげられます。これにより、エイズは以前に比べると怖い病気ではなくなりました。しかし、安心できる要素は増えても、やはり全世界で約4千万人のHIVウイルス陽性者がいます。特に、東南アジア方面や中国、旧ソ連などでは患者が急増、アフリカ・ボツワナでは国全体がエイズで滅びるといわれるほど感染者が増えています。
 一方、日本の場合は薬害エイズという医原病の側面が強く押し出されたために、性感染症というエイズの本質が忘れられそうな印象があります。しかしながら、日本国内でもじわじわと性感染者が増加しています。

  
●体に居座るウイルス
  
   HIVのウイルスはCD4陽性T細胞や血管内皮細胞、ランゲルハンス細胞など体のどこにでも居座ります。このウイルスに感染するとCD4リンパ球数が徐々に減少していきます。一定の数までは病気の兆候はありませんが、一定数をすぎると、日和見感染が始まり、治療を要する状況となります。これがエイズと呼ばれる症状です。
 これに対しHIV感染症は、HIVウイルスが体に入って陽性ではあるけれど、無症候の状態を指します。この状態は病人ではありませんが、早期治療を考える対象です。
 HIV感染については検査もかなり進歩しており、信頼できる状況です。ただ、ウインドウピリオドと呼ばれる、検査をしても抗体が出ない時期があるため、それを考慮する必要があります。この期間は通常感染後6週間〜3カ月ほど要します。この期間に無意識に感染源となることがあり、問題とされています。また、時にスクリーニング検査で擬陽性が出ることもありますが、この場合は再検査を行います。
  
●予防対策に重点を
  
   HIVに感染してもウイルスの増殖を抑え、進行を阻止する治療法が開発されたことで、エイズは怖い病気ではなくなりました。しかし、そのためには専門医にかかり、莫大な治療費をかける必要があります。また、薬は所定の服用回数を守らなければ、治療効果が格段に落ちてしまいます。そういった点で、通常の慢性疾患より治療は困難です。今後は予防的な段階で対策を講じ、患者やキャリアを増やさないことが必要です。
  
 

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