平成15年度は、医療制度改革「基本方針」の公表を受けて、社会保障審議会・医療保険部会で具体化へ向けた議論が開始されたが、医療制度改革は平成17年度、改革実現は平成20年度というスケジュールで成案化に取り組むこととなっており、健保連では、医療制度改革の前倒し実施と当面の緊急対策の必要性を強く主張してきた。
一方、健保組合の財政は、平成15年4月に導入された総報酬制や本人3割負担などで、全体としては小康状態を保っているものの解散による組合数の減少や被保険者数の漸減傾向など、不安定要素は依然として大きく、憂慮すべき事態となっている。
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健保連では、「基本方針」の公表後@拠出金制度の法制面の検討WG、A高齢者医療制度・財政調整WG、B保険者の再編・統合問題と事業の共同化WG、C医療提供体制の検討WGを中心に論議し、問題点の検証作業を進めてきたが、これらを踏まえ6月12日、改めて今後焦点となる課題を次のとおり決定した。
@拠出金制度の法制面および司法的解決策の検討、A社会的連帯の意義の明確化と職域連帯の関係、B保険の自立性と財政調整の限界、C保険料のあり方・水準、D地域特性と都道府県単位等地域保険の位置づけ、E医療機関情報の提供等保険者機能の強化、F外来報酬を含め診療報酬体系の合理化、G患者中心の医療実現のための医療提供体制の基本的あり方。
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平成14年度決算および平成15年度予算の健保組合の状況 |
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@平成14年度健保組合決算は、赤字額が4、003億円と過去最悪を計上した。8割強の健保組合が赤字財政に陥り、その要因は、保険料収入の減少(被保険者数、平均標準報酬月額とも前年比マイナス)と拠出金の増大であり、極めて深刻な事態となった。
A平成15年度健保組合予算は、4月からの総報酬制や本人3割負担の導入などで、赤字額は減少したものの、6割以上の組合が依然として赤字を計上、赤字基調を改善するには至らなかった。
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社会保障審議会・医療保険部会における
「医療制度改革基本方針」の具体化へ向けた議論 |
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医療保険部会は、7月16日に初会合を開き、平成16年3月22日まで延べ6回医療保険制度体系のあり方、高齢者医療制度のあり方、保険者の再編・統合、高齢者の前期・後期区分の制度構築など、厚労省の示した施策をもとに、その是非が激しく議論された。
健保連としては、焦点は「負担の問題」と位置づけたうえで、高齢者医療制度における連帯の考え方や前期・後期区分の問題、また保険者の再編・統合問題をとりあげ、徹底的な議論の必要性を主張した。
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9月22日、留任した坂口厚労相は「医療制度改革は、まだ半ばであり一層進めていかねばならない」と早期に着手する考えを表明して、「予防医療を重視した医療制度改革に取り組み、保険者機能の強化を再編・統合に合わせ検討していく」ことを明らかにした。
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10月20日に開設したインターネットによる病院情報検索サイト「けんぽれん病院情報」は、健保連がめざす患者中心の医療の実現に向けた第一歩であるとともに、保険者機能の強化の一つの姿を医療の情報提供という手段で具体化したものであり、検索可能な病院数は、16年3月末日現在で2、391病院となっている。なお、愛称を「ぽすぴたる」とし、親しみやすいサイト運営をめざしている。
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平成15年度健保組合全国大会は、「医療制度改革の早期実現を求める総決起大会」として11月21日に開催し、危機的状態にある健保組合の窮状を訴え、直面する危機を乗り越えるための改革の前倒しと、特別緊急対策の必要性を強調し、医療制度改革の早期実現を要望した。
大会では「医療制度改革の前倒し実施」「拠出金負担の廃止と公平な制度の創設」「国民が納得できる診療報酬改定の実施」「社会保険方式の堅持と患者中心の医療の実現」をスローガンとして満場一致で決議した。
本部および各都道府県連合会は、各政党国会議員や厚生労働省・財務省を訪問して陳情活動を展開し、大会決議の実現を強く要請した。
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平成16年度診療報酬改定は医療費全体でマイナス1.0% |
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平成16年度診療報酬の改定は、12月18日の中医協総会で診療報酬本体はゼロ%、薬価・材料価格は1.0%減の合計マイナス1.0%の改定率で実施することとなった。そして、平成16年2月13日には厚労相の諮問を受け、即日了承答申した。
改定の基本的な考え方としては@国民皆保険体制を持続可能なものとし、患者中心の質がよく安心できる効率的医療を確立する、A医療の安全・質の確保、具体的には、DPC・小児医療・精神医療等を重点的に評価し、国民が納得できる改定とする、とした。
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