広報誌「かけはし」

■2004年6月 No.393

 平成16年度第1回保健師連絡協議会決算総会が5月28日、健保連大阪中央病院で開かれました。総会では、平成15年度事業報告と収入支出決算等が承認されました。総会後「産業保健現場におけるコーチングサポートの実際」をテーマに、オフィスSerendipity代表取締役の鱸(すずき)伸子氏による特別講演会が行われました。


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各議案は賛成多数で承認された

 総会は、沖中奈美子会長の開会あいさつで開始。来賓の三洋電機連合健康保険組合の林勝彦専務理事は、「笑顔を絶やさずに話かけられると難しいことでもわかったような気になる」という新聞記事を取り上げ、人に対するときの笑顔の大切さについて示唆に富んだお話をされました。
 総会は出席45人、委任状35人で会員総数89人の過半数を満たし成立。議案第1号は平成15年度事業報告、第2号は平成15年度収入支出決算、第3号は平成15年度収支残金処分について。加えて監査報告も行われ、いずれも賛成多数で承認されました。その後、役員交代の発表があり、会長の松下電器健康保険組合鮫島真理子さんほか9人が役員に就任しました。
 総会後、大阪連合会の置田専務理事による「健康保険組合をめぐる情勢報告」(別掲)がありました。

オフィスSerendipity 代表取締役 鱸伸子氏

QOL高めるサポート信頼関係は必須

 
鱸伸子氏
 コーチングの語源は「馬車」に由来し、「大事な人を目的地まで運ぶ」という意味で使われました。日本では、94年ごろからウエルネス&メディカルコーチングの研究が行われるようになっています。
 コミュニケーションの形態は、コンサルテーション、カウンセリング、コーチングに大別することができます。コーチングをたとえると、一本道を歩く一歩一歩を充実させ、意味あるものにしてくれるものといえます。つまり、コーチングはQOL(=生活の質)を高めるサポートをしてくれるのです。
 コーチングは、すべての答えは相手が持っていることを前提に、相手の自発的な行動を促すコミュニケーションの技術。
 ●人は一人ひとり違う●人は無限の可能性を持っている●すべての答えはその人のなかにある●相手の「強み」に焦点を当てる●他の視点を提供する●100%相手の味方でいる。というのがコーチングの基本的な考え方です。
 まず、信頼関係を築き、空間を共有し、話し、聴き、理解し、関係を築くという、コミュニケーションの5段階を経た上でコーチングスキルを発揮しなければ、コーチングは機能しません。特にコーチングスキルを伝える前提として、相手との信頼関係を築くことは必須。そのために、コミュニケーションの5段階を確実に作り上げることが重要です。基本は、答えは相手が持っていることを前提にコミュニケーションのうち90%は相手の話を聞き、残り10%だけこちらから話すこと。コミュニケーションはキャッチボール。相手が返しやすいボールを投げることです。コーチングには100以上のスキルがありますが、よく使うのは聴く、承認する、共感、指示する、沈黙、率直に伝える、明確化、結果を見せる、リクエストするといった技術。なかでもコーチングの最高の技術とされるのが「傾聴」です。
   

基本は「聴く」こと 4タイプ別の関わり

 コーチングの基本は聴くことに始まります。人間は話を聴かれていないと、孤立感を感じます。話を聴くときのマインドセットによって相手はことばも態度も変化します。コミュニケーションは相互作用なのです。
 もうひとつ大事なのがタイプ別コミュニケーション。コーチングでは4つにタイプ分けします。これは思考パターンと外界との関わりや、得意・不得意、どのようなことに価値をおいているかといったことで分類するもので、人の優劣を決定するものではありません。親分肌でエネルギッシュな人を「コントローラー」、楽しく目立ちたがり屋の「プロモーター」、和を大切にし、面倒見がいい「サポーター」、冷静沈着で完全主義の「アナライザー」の4タイプがあります。ひとりの人が、2種類以上のタイプを兼ね備えている場合もあります。患者さんと接する場合も、例えば、「アナライザー」型の人であれば、データを重視した話をするなど、各タイプを念頭にアプローチをした方が、よりよいコミュニケーションを取ることができるはずです。こうした観点から、コーチングをとらえてもいいと思います。
 そしてこのコーチングスキルを今までお使いのコミュニケーションスタイルにもう一つバリエーションを増やして、医療健康の分野だけではなく日常生活においてもお使いいただけたらと思っています。


  


 平成16年度健康保険組合の予算では、老人拠出金は減少しています。一方、退職者の拠出金の増が全体からいうと微増程度にとどまっているようです。最悪の14年度と比較すれば収支状況は多少よくなっており、一応総体的に見ると小康状態ではないでしょうか。しかし一方では、組合数、加入者の減少は依然として続いています。
 来年4月から全面施行される「個人情報保護に関する法律(個人情報保護法)」について、健康保険組合はレセプト、適用関係、現金給付、健康診査関係などのほぼ全部が個人情報保護法の対象となります。プライバシーについては厳しい時代、特に外部に健診結果など持ち出す場合、持ち運びにも十分な注意が必要となります。
 現在、社会保障審議会医療保険部会で高齢者医療制度に関する議論のなかで、75歳未満の医療保険制度の保険者には疾病の発症、重症化予防や医療費適正化に向けた保健事業を促し、そのインセンティブを与えるため、保険者の努力や一定の成果が「高齢者医療制度の医療費負担に反映される」ような仕組みを構築すべきとも指摘しています。
今後は保健師のさらなる活躍が期待されるところです。