広報誌「かけはし」
 
2004年2月 No.389
高血圧とその合併症

 「高血圧とその合併症」をテーマに、健保連大阪中央病院の久保正治副院長による健康セミナーが1月27日、同病院の大会議室で開かれました。

 
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久保正治副院長

 

 高血圧は頻度の高い病気で放置すると重大な合併症を来しますが、早期の発見、治療により合併症を抑えることができます。高血圧診断には正確な血圧測定が必須で、静かで暖かい環境下に背もたれのある椅子にすわった安静状態で行います。冬の低い室温下や厚着した衣服のままでは正確な測定が出来ません。
 


●高血圧の基準・臨床症状
   収縮期血圧が140mmHg以上あるいは拡張期血圧が90mmHg以上を高血圧としますが、一回の測定だけでは高血圧とせずに日時を変えて測定して診断します。検診時などで高血圧を指摘された場合には自覚症状がないからといって放置せずに、定期的な血圧測定と必要ならば治療を受けることが重要です。重症の場合は頭痛、意識障害などの自覚症状が出てきます。
 
●病因別高血圧症
   本態性高血圧では、食塩やストレスに対して血圧が上昇する傾向があります。肥満、運動不足も高血圧の原因となります。これとは別に、腎臓や腎血管に原因のある高血圧や、内分泌性、心臓・血管性、薬剤性高血圧などの二次性と呼ばれる高血圧もあります。これらは原因を治療すれば根治できるものです。講演では、頭痛を主訴に受診された20歳女性で、腎動脈狭窄による腎血管性高血圧を見ていただきました。
 
高血圧の合併症
   心臓、血管系に圧力負荷がかかり、これらの臓器障害が合併症としておこってきます。重要な併症は脳出血や脳梗塞などの脳血管障害です。高血圧治療の進歩と共に脳出血は減ってきましたが、脳梗塞は糖尿病や高脂血症の増加と共に減っていません。頸動脈に動脈硬化性変化が起こり狭窄に至る場合があり、これは脳梗塞症の原因にもなります。また、心臓には狭心症や心筋梗塞などの冠状動脈疾患や、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁閉鎖不全症などの弁膜症がおこってきます。大血管には大動脈瘤や閉塞性動脈硬化症が起こってきます。腎臓には細動脈の硬化を基盤とした腎硬化症を来たし、蛋白尿や腎不全の原因となります。
 
高血圧の治療
   高血圧と診断されたら、まず生活習慣を変える治療から開始します。塩分の制限、Kの摂取、肥満の改善、運動療法、アルコールの制限が有効です。高脂血症、糖尿病などが共にある場合には熱心に改善する必要があります。それでも血圧が改善しない場合には内服薬による薬物療法を開始します。利尿薬、Ca拮抗薬、α遮断薬、β遮断薬、αβ遮断薬、ACE阻害薬、A―U受容体拮抗薬など副作用が少なく臓器保護作用に優れた薬が多くありその特徴を利用して治療します。これらにより高血圧合併症の予防が実証されています。「血管と共に老いる」といわれています。どうか、血管に優しい生活をしてください。