広報誌「かけはし」
 
2003年10月 No.385
健康的にやせたい人のために

   「健康的にやせたい人のために」と題して、健保連大阪中央病院の久保正治副院長による健康セミナーが、9月18日、同病院で開かれました。
 

 
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●やせなければならない人は?
 

久保正治副院長

   我が国の栄養状態は、この50年にわたって動物性の蛋白質、脂肪の摂取量が増加し続けています。これらのおかげで身長などの身体的発育がもたらされましたが、一方では過栄養に加えて運動不足もあって20歳代の若さで既に生活習慣病を発症してくるケースが目立っています。この様な方はぜひやせなければなりません。  近年の肥満研究によって多くのことが分かってきました。肥満の指標として一般的に用いられているBMIなどの指数は、個々の症例については一つの目安にしかなりません。しかし、CTスキャンで腹部の脂肪分布を調べると、内臓脂肪面積が100cm2以上の方は代謝異常を合併しやすく、たとえ体重が正常範囲であっても代謝性疾患の原因となっていることが分かってきました。これが「隠れ肥満」と呼ばれるもので、動脈硬化性疾患も合併しやすいことも分かってきました。日々の生活の中ではとらえにくいものですが、腹まわりが太いものの皮下脂肪をつまんでも余り厚くない状況があれば内臓蓄積肥満を推定させます。またサスペンダーを使用しないとズボンがずってくる男性も同様です。また、逆に脂肪組織量の全体が多ければやせなければならないというわけではありません。女性らしい体型の源は豊富な皮下脂肪のもたらすもので、男性よりも脂肪組織の全体量は多いのですが内臓脂肪は少なく、やせる必要は全くありません。  一方、やせなくても良いのにやせなければならないと勘違いして、食事制限に努め、結果的に偏食となって、栄養失調になっている方も若い世代を中心に出てきていますので注意が必要です。

●誤ったやせ方
     食事療法は本能に逆行するものが多く、実行しなければならないと分かっていてもなかなか実行しにくいもので、受け入れやすいことから実行していきます。例えば、「食事療法をしましょう」と声をかけると、分かりました「運動します」とすり替えてしまう方もあります。お酒を飲まれる方は、おかずをつまみながらお酒を飲んで、ご飯をやめておこうとなりがちです。この方は、おかずとご飯を同時に食べるという食事スタイルに変えないと改善は無理でしょう。  また、健康雑誌と称する本には、大いに誤った食事療法がよく紹介されています。○○推薦、△△ダイエットといった類のものです。単品を勧めるものが多く、低カロリーかもしれませんが栄養のバランスを無視したものが多いようで、この食生活の後にはリバウンドがくることが多いことは皆様が経験されているとおりです。  やはり、栄養的に見てバランスよいおかずと、空腹感が少ない腹持ちの良い米飯を中心にした食事をとる食事療法を勧めます。