平成14年度は、医療保険制度の抜本改革が強く求められるなかで、健康保険法等改正の施行や、抜本改革の基本方針が閣議決定されるなど、一つの区切りの時期を迎えた。
しかしながら、健保組合の財政は、平成15年度予算でも赤字基調を改善するには至らず、また相次ぐ解散・合併などにより、この1年で48組合も減少して1、674組合となり、依然として極めて厳しい状況に置かれていることに変わりはない。
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健保連では、5月10日に開催した役員改選の臨時総会において再選された千葉会長は、就任の挨拶で、新たな2年間を「抜本改革の実現に向けた正念場」と位置づけるとともに、健保組合は、過去に例のない危機的な状況にあることを強調し、事態の打開に強い決意を表明した。また、総会では、健保法等改正案の審議促進・成立と医療制度の安定のため、基本に立ち返った取り組みを本格化させる決議を採択した。
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健保法等改正案の審議は、平成14年4月の衆議院本会議の主旨説明に始まり、国会における参考人意見聴取では、下村副会長が「法案の早期成立と抜本改革の速やかな実現、特に拠出金制度の廃止と高齢者医療制度の創設」を強く要請した。
法案は6月に衆議院を通過し、7月26日には参議院で政府原案どおり可決成立し、10月1日から高齢者の1割負担などが実施され、平成15年4月1日から総報酬制や被用者保険本人の3割負担などが実施されることとなった。また、改正法の附則に、新たな高齢者医療制度の創設や診療報酬体系の見直しなどについて14年度中に具体的基本方針を策定する旨が盛り込まれた。
健保連は、改正健保法を医療保険制度抜本改革に向けての第一歩と評価し、検討課題および取り組みの基本方針を「今後の医療保険制度の推進について」としてまとめ理事会において確認した。
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健保連では、平成14年9月に今後の抜本改革に臨む体制を充実強化するため、@拠出金制度の法制面からの検討
A医療提供体制の検討 B財政調整の論点整理
C保険者の再編・統合問題と事業の共同化の検討の4つの改革ワーキンググループを新たに設置して改革論議に積極的に参画していくとともに、課題に対する方針を明確にしていくこととした。9月以後各ワーキンググループの審議状況をまとめたものを12月の理事会に中間報告として提出し了承を得た。
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9月25日、坂口厚労相は、保険者の再編・統合、診療報酬体系の見直し、高齢者医療制度の創設、改革のスケジュールなどを盛り込んだ医療保険制度の改革私案を発表した。その中で@都道府県単位を軸とした保険運営 A年齢構成や所得に着目した負担の公平化を改革の柱に据え、制度の一元化(給付と負担の公平化)を目ざす考えを打ち出した。
健保連としては、将来的に最大のリスク要因である高齢者医療制度の解決策が何ら示されていないまま、財政調整と保険者の統合で問題解決を図るという考えなどに対して強い疑念を表明した。
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「拠出金廃止と新制度創設を求める総決起大会」とした平成14年度健保組合全国大会は、11月26日に開催し、最重要課題である「拠出金の廃止と新たな高齢者医療制度の創設」の必要性を前面に打ち出し、「自ら選択し安心できる患者中心の医療の実現」「簡素でわかりやすい診療報酬体系の確立」「自立した保険者を基盤とする保険体系の堅持」の大会スローガンを全健保組合の総意として満場一致で決議した。また大会終了後、本部および各都道府県連合会は各政党関係国会議員や厚生労働省、財務省に対して陳情活動を展開し、大会決議の実現を強く訴えた。
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11月28日に自民党医療基本問題調査会がまとめた医療制度抜本改革の中間報告は、75歳以上を対象に社会保険方式による独立型の高齢者医療制度を創設し、老健拠出金制度は廃止して、退職者医療制度は存続するとしたものであった。保険者の再編・統合については、将来の一元化は有力な考え方と明記して、国保と政管健保の都道府県単位化とともに、健保組合は地域的な集結を視野に小規模、財政窮迫組合の対応を検討課題とした。
健保連は、負担問題に対する将来展望や解決策が不明確と指摘し、今後、具体的で明確な基本方針の策定に期待するとの見解を示した。
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12月17日に公表された厚生労働省の医療制度改革試案は、@保険者の統合および再編を含む医療保険制度の体系のあり方 A新しい高齢者医療制度の創設 B診療報酬体系の見直しを主要課題に「抜本改革・基本方針」のタタキ台と位置づけた。注目の高齢者医療制度は、老人保健制度の廃止、社会保険方式の維持などを基本的な考え方として「財政調整案」と「独立保険方式案」の2案を併記した。
健保連は、試案に対する見解と今後の対応の方向性を確認した「医療制度改革のあり方について」をまとめ公表した。その中で高齢者医療制度の2案は、制度の持続性が明確でなく、特に財政調整案については「わが国の保険制度の考え方や実態を無視した一方的議論で全く容認の余地はなく断固反対である」と強く批判し、また、将来の制度一元化への反対などを確認した。
併せて、次期改革を17年度着手、19年度以降に実施するという考え方に対して、健保組合財政の窮状が継続する状況にあり、早期に実施する必要があるとの考えを強調した。
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3月28日閣議決定された「基本方針」は、焦点となっていた高齢者医療制度の創設を、75歳以上の後期高齢者を対象とした独立方式の保険制度とし、前期高齢者は、制度間の財政調整を導入して、年代別の重層的な枠組みを構築することとした。これにより老健・退職者両拠出金は廃止されることになった。また、医療保険制度の体系は、都道府県単位を軸とした保険運営を目ざして再編・統合を推進し、健保組合は現行の体系を維持しつつ、小規模・財窮組合については、県単位の地域型健保組合の設立を認めるとの方針を示した。これらの改革時期は、平成20年度の実現を目標に、17年度に制度改正に着手するとしている。これに対する健保連の見解は、基本方針が盛り込んだ老健・退職者両拠出金制度の廃止には「改善の努力」がみられるとして一定の評価をする一方、不透明な部分も多く残されていると指摘、前期・後期に二分する高齢者医療制度の財源構成や国保と被用者保険間の「調整」の方策が不明確なものに止まっていることを踏まえ、拠出金廃止の方針決定後も拠出金制度問題は未解決であるとし、国保制度の構造や税財源問題への検討を深め、一層の改善に努めるよう要請した。
また、健保連は、これら基本方針の残された課題を中心に、医療制度改革の活動を継続していくことを表明するとともに、政府・与党に積極的に提言し、健保連の主張を反映する改革の具体化をめざしていくこととした。
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