広報誌「かけはし」

■2003年6月 No.381

 平成15年度第1回保健師連絡協議会決算総会が5月30日、健保連大阪中央病院で開催されました。総会では平成14年度事業報告と収入支出決算等を承認。総会後、岡山大学大学院医歯学総合研究科の川上憲人教授による特別講演会「職域におけるメンタルヘルス〜進め方のコツ〜」が実施されました。


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 総会はまず、沖中奈美子会長による開会あいさつのあと、来賓の東洋紡績健保組合楠田満俊常務理事があいさつ。楠田常務理事は定期健康診断やSARS問題への対応、健康増進法の施行などにより、ますます幅広い活動を求められる保健師の労をねぎらったあと、健康増進法の背景について解説。最後に役割を果たすことの大切さについて力説して締めくくりました。
各議案は拍手で採決された
   総会は出席41人、委任状32人で会員数54組合91人の過半数を満たし成立。議案第1号は平成14年度事業報告について、議案第2号は平成14年度収入支出決算について、議案第3号は平成14年度収支残金処分について。さらに、監査報告も行われ、いずれも賛成多数で承認されました。
 総会後には、大阪連合会の置田榮克専務理事による「健保組合をめぐる情勢報告」(別掲)がありました。

メンタルヘルスは職域全体で展開を
 
川上憲人教授
 事業場のメンタルヘルスには「従業員の健康・生命・生活を守る」「生産性アップや事故の軽減」「精神障害による労働災害や、過労自殺のリスクマネジメント」といった意義があります。旧労働省が出した「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」では、事業場におけるメンタルヘルスで「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」「事業場外資源によるケア」の4つのケアを打ち出していますが、それに先だって大切なのが事業場による計画の策定。事業場の全員が参加し、メンタルヘルスを進めるということも大事なポイントです。メンタルヘルスを進める主体は、事業者ですが、健保組合はそのサポート役として位置づけられています。健保組合が果たすべき役割には、相談対応、教育・研修や情報提供があります。
 職域におけるメンタルヘルスを進めるコツは5つにまとめることができます。
 @メンタルヘルスは専門家まかせではなく、職場全員がかかわるべきA目の前の具体的問題から取り組むB個人の技量ではなく、システム改善で対応C専門家はうまく使うD10年かけて1歩1歩進んでゆく成長するメンタルヘルスを目指す。
 職域におけるメンタルヘルスの相談体制をつくる場合、重要なポイントは、まず、守秘義務を守って相談できる事業場内の相談担当を決めて、これを周知すること。次に、みなさん産業保健スタッフが相談できる専門家を確保しておきます。さらに管理監督者の教育・研修。最低限管理監督者が気づいたケースだけは産業保健スタッフにつながるようにしておくと、自殺などのリスクが軽減できます。管理監督者向けのツールやシミュレーションゲームについては、私のウエブページ(http://eisei.med.okayama-u.ac.jp/jstress/)からダウンロードできます。よい医療機関を確保することも重要です。統合失調症、うつ病、アルコール依存症など得意分野ごとに見つけておくといいでしょう。同時に自助グループも要チェックです。そして受診先との連携。紹介状によって情報提供するなどの配慮が必要です。
   
重要な復職判定正しい知識を持とう

 さて、職域におけるメンタルヘルスでもう一つ大事なことが、復職。適応を支援するための組織とルールづくりが必要です。特に復職判定と復職後のフォローが非常に有効です。家族からの情報収集は復職判定の重要なファクターです。復職可否の最低条件は、出勤時間に起床できる、1日作業できる、翌日に疲労を持ち越さないことです。安易な配置転換は本人の甘えを生むので慎重に。
 教育研修も重要ですが、職域においては心の健康について正しい知識を持つことも必要です。精神疾患は特別な病気ではないこと、心の病気ではなく、脳の病気であることなどを知ってもらいましょう。メンタルヘルス活動を1回で終わらせないためには、関係者全員が「やってよかった」と思える活動を優先すること。みんなの満足度が高ければ、次期も継続しようという勢いが生まれます。これらの点をふまえて、職域でのメンタルヘルス活動を進めてください。


  

 今年3月28日の閣議決定で、新しい高齢者医療制度が示されました。その一つが、高齢者を年齢で区分し、75歳以上の後期高齢者は新たに独立した制度を創設し、75歳未満65歳以上の前期高齢者は引きつづき国保・被用者保険に加入する。これに伴い、現行の老人保健制度と退職者医療制度は廃止されます。また健康保険組合の65歳以上の被扶養者も今後、保険料を負担することが検討されています。
 医療関係では、健康保険組合と、医療機関が直接契約を結ぶことができるようになり、営利法人による医療機関の開設も認められることになります。また、個人情報保護法が制定され、保健師のみなさんも、今後一層慎重な個人情報の取り扱いが求められるようになると考えられます。
 さらに少子高齢化対策として、育児休業中の厚生年金の本人負担免除を現行の1年間から3年間に延期することが議論されています。これは若い方々にとって朗報といえるでしょう。