■2003年2月 No.377
安定した収入にならない総報酬制
―予算編成で感じたこと―
節分も過ぎて、健康保険組合では新年度予算の編成が大詰めとなり、早いところでは組合会も終えたところもあるだろう。
その平成15年度の予算を組んでいて改めて感じた事がある。
一つは老人保健拠出金の計算方法である。これまでも複雑であったが、15年度からはさらに医療費を前期と後期に分けて計算することになるため、より煩雑になった。
計算式を前に進んだり後戻りしたりまるでパズルのようである。根拠に基づいた金額を算出するために必要だとされるのだろうが、なにか無理に難しくしているのではと勘ぐりたくなる。しかもやっとのことで算出した拠出金額はあくまでも”見込み“であって、確定金額は支払基金からの通知を待つことになる。それならもっと簡単な計算方法にできないものなのか。
もう一つは「総報酬制」である。
給与の年俸制など賃金体系の多様化等に対応し、保険料負担の公平化を図るために賞与からも保険料を徴収することになった。
しかし、本当に所得に応じた公平な負担になるだろうか。確かに賞与支給額の低い被保険者は支給額に応じた保険料をキッチリ納めなくてはならないが、200万円の上限を超える高額な支給については保険料を負担しなくて良いことになる。
また、賞与の回数がある。年間3回を超えない手当について支給毎に保険料を徴収することになっているが、一般的に賞与は夏と冬の2回支給される。しかし、事業主や会社役員は決算時に配当として受け取るのが建前である。高額収入が見込まれる会社役員らは年1回の負担で良いことになる。
賞与や臨時の支給毎に保険料を支払わなければならないとなると、負担を減らすために支給回数を減らすことを考える事業所も出てくるのではないか。
そして、任意継続被保険者には賞与が無いため新たな負担はない。逆に、保険料率が下げられる場合には、賞与のある被保険者の負担増のお陰で任意継続者は保険料が減ることになる。
さらに、一番の問題点は組合財政にとって収入の不安定さがあげられる。
現在のような出口の見えない不況が長引く社会情勢の下では、賞与は確実な財源とはいえないだろう。前年度の実績もまったく参考にならない。前年を下回ることや、悪くすれば”賞与なし“ということもあり得る。事業主でさえ翌年の予測ができないのではないか。仮に予測どおりの賞与があったとしても、組合に入る毎月の保険料は、年間収入の12等分の1ずつとはならない。賞与分の保険料が入ってくるまでは収入に不足が生じる場合がある。賞与分の収入月とそうでない月の収入差は大きいと思われる。不足を生じさせないために保険料率を高めに設定するなどの対策が必要になる。
総報酬制は、赤字にあえぐ健保組合の財政措置として導入されたものであるが、これらのように様々な問題点がある。そもそも、健保財政をここまで悪化させたのは、老人保健をはじめとする拠出金制度を放置してきたことにある。健保連が主張するように拠出金制度を廃止すれば、無理のある財政措置は必要なくなるのではないか。
早急な対応を望むものである。
(克)