広報誌「かけはし」
  
■2002年12月 No.375

21世紀外科が変わる
   
 「21世紀外科が変わる〜切らない外科、遠隔手術とロボット手術〜」と題し、健保連大阪中央病院院長の大橋秀一氏による健康教室が11月15日、薬業年金会館で開催されました。
 
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外科100年目の革命 普及する内視鏡手術
 
 外科治療は麻酔法が開発された100年ほど前から飛躍的に発達してきました。当初は患部を積極的に切除する手術が主流でしたが、10年ほど前からは局所だけを切除する縮小手術が中心になっています。それと前後して、体内や臓器内に内視鏡を入れ、画像を見ながら手術する内視鏡手術が登場しました。これは外科の世界では実に100年目の革命といわれ、2001年頃にはほとんどの臓器で内視鏡手術が行われるようになりました。この手術の長所は患者さんの侵襲が少なく、美容的にも優れ、回復が早いこと。医療側にとっては手術そのものが習熟を要し、専用の機材が必要で、すべての症例にこの手術が適用できるわけではないことなどの短所がありますが、これらは時間をかければ解決できる問題です。
 内視鏡手術の対象疾患でもっともよい適応は、リンパ腺の廓清が不要で手術法がシンプルな胆石や十二指腸潰瘍などの良性疾患です。一方、最近は中等度の胃がん、大腸がんなどにもこの手術法で対応するところが増えています。従来なら開腹が一般的だった症例も、最近は内視鏡手術という選択肢があります。

ロボットで正確、安全 21世紀はサイバー手術へ
   内視鏡手術は様々な道具を使うので具術、あるいは画像を使った画術といえます。具術が進歩するとロボット手術に、画術は遠隔画像伝送や遠隔手術支援につながります。画術は電話回線で画像を送ることができるので、これを医療に応用すれば遠隔地の病院同士がすぐれた技術を共用することができます。
 ロボット手術はより安全に、正確に、人間のエラーを回避し、術者も快適に手術を行うことができます。外科用ロボットはコンピュータの指示通り一定の動きをする「プログラム方式」と呼ばれるものと、術者の手の通り動くマジックハンドのような「マスタースレイブ」と呼ばれるものの2種類があります。プログラム方式のロボットは、脳外科や整形外科で骨を削る際に利用されます。
 マスタースレイブ方式のロボットは術者がコントローラーを使い、画像を見ながら、隣の部屋にいても内視鏡を使って手術することができます。先端のアームはほとんどリアルタイムに360度回転するので、複雑な手術にも対応できます。
 今後は内視鏡手術に加えロボット手術や遠隔手術、コンピュータ利用の手術、マイクロマシンなど、多岐にわたった手術が行われるでしょう。こういったものを総称してサイバーサージェリー(手術)と提唱され、NASAでは無重力下の手術に関する研究も進められています。21世紀の手術は宇宙につながっていくといえるでしょう。