広報誌「かけはし」

■2002年8月 No.371
時評

膝の痛みとなおし方
 
〜最新の診断と治療について〜
 
 「膝の痛みとなおし方」をテーマに、健保連大阪中央病院整形外科部長の井上雅裕氏による健康教室が7月25日、薬業年金会館で開催されました。

早期回復望める
関節鏡視下手術
 膝の痛みの原因には、けが、使いすぎ、加齢などに加え、リウマチや化膿性の関節炎、腫瘍などがあります。  変形膝関節症は、加齢とともに膝関節の軟骨がすり減り、O脚になって膝の曲 げ伸ばしができず、歩くと痛いという症状です。初期症状は歩き始めに痛みがあります。さらに関節の可動域が狭くなり、膝が伸ばせなくなります。治療は、まず安静、減量です。足の筋力増強などですが、歩くとかえって足が痛くなるのでプールでの歩行や、自転車、仰臥位での足の上下運動がよいでしょう。ほかに装具や薬物療法、ヒアルロン酸の注射も効果的です。このような治療で効果のない場合は関節鏡視下手術や人工関節置換術などの手術になります。術後は膝の痛みがなくなり、活動的になるなど、ライフスタイルも変容するので治療には大きな意味があります。
井上雅裕整形外科部長
 関節の診察をするには以前は関節鏡検査を行っていました。ビデオカメラの発達とともに、モニターに映像を映しながら手術をする時代になってきました。それが関節鏡視下手術です。関節鏡視下手術は小さな部分を拡大するので正確な手術ができるうえ、キズが小さく痛みが少ないのが特徴です。リハビリも早期からできるので日常生活やスポーツにも早期に復帰できる、優れた手術です。

半月板損傷と
靱帯断裂の治療

 膝関節には半月板という三日月型の軟骨の板があります。これがけがや加齢によって断裂する場合があります。レントゲンでは異常がとらえられませんが、動くと腫れます。また、円板状半月板という生来半月板が非常に分厚い人が東洋人の3〜4%にみられますが、その場合、半月板が自然に断裂して、多くは手術に至ります。MRIで診断できるので、子どものうちに発見しておきたいものです。
 中高年者で膝が痛い場合は内側半月板が次第に断裂して、水がたまる場合があります。そういう人は関節鏡視下手術で悪い部分を切除します。しかし、損傷部を取れば症状はなくなりますが、半月板は体重を支える大切な部分です。現在は若い人の半月板の損傷に対しては断裂部を接着術で温存する方向になっています。
 膝の痛みの原因には靱帯損傷もあります。前十字靱帯損傷は関節鏡視下手術で自己組織を移植して再生できます。一方、内側側副靱帯は、前十字靱帯が損傷していなければ、手術も固定も不要です。早めに動かした方が早く回復します。
 膝の痛みはまず原因を知らなければいけません。膝が痛いから電気を当てるという治療では、間のロジックが抜けています。必ず専門医の診察を受けてほしいと思います。