広報誌「かけはし」
■2002年1月 No.364
職場のメンタルヘルス
    「職場のメンタルヘルス」をテーマに、早稲田大学人間科学部教授の野村忍氏による心の健康講座が12月18日、薬業年金会館で開かれました。
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●メンタルヘルスの具体的な進め方
    職場における安全衛生管理と労働災害の防止を目的に「労働安全衛生法」が制定されたのが1972年、そして88年には労働災害、職業病の予防からメンタルヘルスへと改正されました。
 その背景には@労働災害による死傷者数は半分以下に減少。A業務上疾病の発生状況が昭和54年には2万人だったのが、平成5年から1万人以下に減少。B産業構造の変化、技術革新の進展などにより、疲労やストレスを感じる労働者が増加し「過労死」が社会的な大きな問題となっている。Cバブル経済の崩壊による深刻な不況とともに「自殺」が急増している、などが挙げられます。自殺者は、98年から年間3万人を超えて増加しつつあり、一個人はもとより周囲も共に予防し、取り組む必要があります。
 事業者が行う健康管理として@シルバーヘルスプランSHP(1979)。A心とからだの健康づくり運動THP。そして2000年には、B事業場における労働者の心の健康づくりのための指針、が示されました。
   職場のメンタルヘルスの進め方については、@心身両面からの健康管理(プライバシーの問題もあり、あまり精神面、心理面に偏るものには抵抗がある。あくまでも、心身両面からの健康管理・健康づくりというアプローチが必要である)。A手作りの対策(企業の構造的特徴、風土、それまでの健康管理の状況など千差万別であり、その企業にあった進め方を考慮し、手作りの対策を立てることが重要である)。Bチームワーク。C健康教育・メンタルヘルス研修(社員が気軽に医療スタッフに健康相談できるような雰囲気づくりを進めていくために、社員全員にメンタルヘルスに関する健康研修を行い理解を深めていくことやコミュニケーションを図る)。以上が大切です。
野村 忍氏

●ストレス予防の6つの方法とは
   ストレス反応は、食行動や嗜好品の変化、行動様式の変化、ギャンブル中毒など嗜癖行動、問題行動等の「行動反応」や「心理反応」、「身体反応」など、人によってその表れ方が違いますが、タバコの本数やアルコールの量など、日誌をつけることにより、セルフモニタリングしていくことができます。
 心の病気には、「うつ病」や不安感や恐怖心、呼吸困難など種々の身体症状があらわれる「神経症」、「心身症」などがあります。なかでも「うつ病」は、人口の3〜5%(WHO推計)と、決してめずらしくなく、軽症うつ病が増加しています。またストレスは心の病気以外に、胃・十二指腸潰瘍や本態性高血圧症、潰瘍性大腸炎、片頭痛をはじめさまざまな疾病を引き起こします。
 ストレスの予防と対策として、@運動をするAリラックスするB発想を転換C感情を発散D社会的支持基盤をつくるE人間関係を良くする。以上6つが挙げられます。人間関係を良くするためには、「悪人を作らない」「個人問題でなく関係の問題と捉える」「相手を変えようとしないで理解する」ことが具体的なポイントだといえます。