広報誌「かけはし」
■2001年9月 No.360
痛風と高尿酸血症
    8月23日、薬業年金会館で大阪府立成人病センター参事兼臨床検査科医長の中島弘氏が「痛風と高尿酸血症の基本的な理解」と題した講演を行いました。
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●種々の合併症の温床となる痛風
   痛風とは高尿酸血症の1症状であり、体内の物質代謝の片寄りがそれをきたす原因です。また痛風は、痛みがあるときだけ大騒ぎし、痛みがなくなると忘れてしまう病気ですが、発作が去ってからが本当の治療の勝負であるということを理解ください。
 痛風の典型的な症状として炎症場所が「腫れる」、「赤くなる」、「痛くなる」の3つが挙げられます。
   痛風発作は身体中のあらゆる関節に起こり得るものですが、部位としてもっとも頻度の高いのが足の親指の付け根で、これに関してはほとんどの医師が間違いなく痛風という診断を下します。そのほか「アキレス腱」、「ひざ」などは、痛みも重く鈍いため本人自身もスポーツ外傷などと勘違いし受診しないことも多いのです。
 痛風は高尿酸血症があり、尿酸ナトリウムの針状結晶によって反復される急性関節炎です。またこれに随伴して痛風結節や尿路結石、さらに合併症として腎障害・虚血性心疾患、脳血管障害などの温床ともなるのです。

中島医長
●合併症予防のための長期管理が必要
   高尿酸血症の病因となるのが、肝臓で尿酸が作られ過ぎる尿酸産生亢進型と腎からの尿酸の排泄低下があります。遺伝的背景や食事や飲酒などの生活習慣、降圧利尿剤等など二次的要因がからみ、マルチプルリスクがあれば虚血性心疾患などの危険性も考慮しなくてはなりません。
 尿酸値が高くなる可能性として肥満、飲酒も挙げられます。肥満の場合、皮下脂肪型は排泄低下、内臓脂肪型は産生亢進とそのタイプによって異なりますが、体重の是正によって尿酸値を下げることが可能です。
 アルコールの場合、@プリン体過剰摂取、A尿酸産生過剰、B尿酸排泄低下が同時におこるので高尿酸血症につながります。なかでもビールは他のアルコールと比較するとプリン体含有量が非常に高いためプリン体過剰摂取の原因となりやすいのです。
 痛風に関しても糖尿病などと同様コントロールが重要であるという考え方から、日本でも管理の均質化のため、96年にコンセンサスカンファランスが開かれ、私どもは治療や長期的な管理の目安を提言しました(6―7―8のルール・中島・松澤)。