広報誌「かけはし」
2001年3月25日 No.354
得意技をアピール
人材とハイテク医療
                大阪中央病院・正岡院長に聞く

 健保組合員の期待の中で昨年6月スタートした「大阪中央病院のその後」を前月号の『時評』で紹介しました。そのとき正岡昭院長にインタビューしたくわしい内容を改めてお伝えします。
 ―新病院を訪れた受診者の評判はいかがですか?
 「待ち時間を大幅に短縮できたのが好評ですね。いままで3日ぐらいかかっていた検査が1日で済むようになりました。オフィス街に近いので、受診者にビジネスマンも多く、歓迎されています」

 ―どんな方法でスピードアップしたのですか?
 「新しい医療機器や電子システムを導入したことで、機動力が大幅に増したことです。それ以上に、診療部門ごとのカベを取り払ったことが大きい。いままでは、検査を依頼する科から実施する科に受診してレントゲン撮影をしたり、いろいろな検査をしていました。受診者はあちこちの窓口へ行ったり来たりして、時間がかかりました。それをコンピュータを通した予約で受診できるようにシステムを改善しました。薬も完全に院外処方にしました」

 ―そんな簡単に改善できるものですか。
 「初めの3ヵ月ぐらいはスタッフも患者も不慣れで混乱しましたね。やっと軌道に乗りました。それもここぐらいの中規模病院だからできたことで、大病院ではなかなか難しいでしょうね」

 ―新病院に入居したスタッフの評判はどうですか。
 「旧病院に比べると格段に明るいイメージです。環境の良さと新しい医療機器の導入が人材確保にもつながっています。こちらが、あそこ(大学)のあの医師に来てほしい、という人を大学が快く送り込んでくれるようになりました。現在40人の医師がいますが、そのうち28人が新しく来たひとです。スタッフが若返ったことで、新旧入り交じって刺激し合い活気が出て来ました」

 ―受診者の年齢構成も変わりましたか。

 「旧病院時代にくらべ平均年齢はぐっと下がりました。3分の2がこちらへ移ってからの新しい受診者です。職業別に見ても、半分近くがビジネスマンです」

 ―得意の医療部門はスポーツ外傷の治療の他にどんなものがありますか。
 「夫婦両方を対象にした不妊治療もそうです。男性だけを対象にした治療では旧病院時代から定評がありましたが、新病院では女性にも対象を広げました。いままでは男性の精子を採取して他の病院に運んでいたのが、ひとつの病院で治療を済ませられるのですから、患者にとっても便利です。準備に半年かけ、この1月から『不妊治療センター』として旗揚げしました」
  ビジネスマンにも好評  
 
 
 
▲受診者でにぎわう大阪中央病院のロビー
 
 ―まだ他にもありそうですね。
 「まだまだ、あります。患者に大変な負担を強いる開腹手術などに比べると負担の軽い内視鏡手術で治療できる領域を広げたことです。『手掌多汗症』といって、手のひらにすぐ汗をかく人がいます。精神的なものと思われがちですが、内視鏡を使って胸部の交感神経のひとつを除去する外科手術もあります。
 食べた物が胃から食道へ逆流する『食道逆流症』も内視鏡で手術できます。
 初期がんのうち、胃、腎臓、大腸がんなどは内視鏡で手術ができることは知られていますが、近い将来、転移リンパ腺も内視鏡で手術できることを視野に入れて研究しています」

 ―旧病院はお年寄りが多かった。そうした人たちの治療の得意科目はいかがでしょう。
 「老人特有のしみやホクロをレーザー光線で取り除く。皮膚がんの予防だけでなく、若々しさを取り戻して、元気で美しい老後を過ごしてもらう。そうした視点からの治療もこれからは必要だと思っています。整老皮膚科と呼びますが、その治療のためのレーザー機器を2台導入しました。
 泌尿器科では、昨年暮れ、64歳の男性のインポテンツ(勃起不能)を治療しました。この障害の治療は、一般的に若い患者さんが対象と思われてきましたが、男性器内の血液の流れを増やせばお年寄りだって治療できます。まだ新しい治療手段ですが、これも高齢者には朗報です」
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 多忙な正岡院長のインタビューは1時間以上におよびました。白髪の柔和な表情の正岡院長ですが、その熱っぽい口調から「21世紀にふさわしい病院づくり」にかける情熱がひしひしと伝わってくるようでした。

※急性期治療病院としての入院日数、ベッド稼動率、病院経営の独立採算などの内容は前号の『時評』で紹介したので、割愛します。
                                  (聞き手・広報委員 佐藤孝仁)