広報誌「かけはし」
2001年1月25日 No.352
   
Q 「膀胱炎のあと残尿感が」
35歳になる女性です。3年ほどまえに膀胱炎になり、薬の服用を1週間くらい続けると治りました。しかし、その後もずっと残尿感があり、季節の変わり目とか、冷えたとき、またトイレを我慢したときなどに、よく感じます。膀胱炎は何回もくり返したりするそうですが、日常生活での注意事項やアドバイスなどお願いいたします。(大阪市・N子)
<答える人>
健保連大阪中央病院
泌尿器科医師
難波 行臣 氏
A 今回のご相談者のように泌尿器科を受診される患者さんのうち膀胱炎を主訴とされる方は、かなり多勢おられます。
 膀胱炎は、膀胱への細菌感染ですが重症化することは少なく、次のような自覚症状が強いことが多いようです。
 自覚症状としては、残尿感、頻尿、排尿時痛、尿混濁、血尿、下腹部不快感などが見られますが、ふつう発熱は伴いません。膀胱炎がすっきりと治らない原因には、膀胱炎の治療の過程で細菌が死滅せずに残りその細菌が再増殖しているのか、もしくは細菌がいったん死滅するが再度感染を起こして膀胱炎症状が生じていると考えられます。今回のご相談者についても、どちらかが考えられます。
 
 さて、膀胱への細菌感染が成立するには、細菌が膀胱粘膜に付着し定着する必要がありますが、通常私たちは排尿による洗浄、上皮の脱落による細菌の粘膜内侵入防止、免疫抗体の粘膜からの分泌などによる防御能によって感染を防いでいます。
 このことをふまえると、膀胱炎になるのを予防するための方法としては、水分の摂取、頻回の排尿、刺激物の大量摂取に対する制限の他に、膀胱の細菌感染からの防御能を障害するような誘因を避けることが再発の予防法として考えられます。
 それでは、その防御能を障害するような誘因はどのようなものかというと、過労、感冒、局所の冷却、不潔な性交などや糖尿病、膀胱結石、膀胱腫瘍、膀胱憩室などが言われています。
 またご質問の中にもあったように、日々の診察においても何度も膀胱炎にかかる人と、1〜2回は感染するがその後はかからなくなる人がいることを経験します。この違いについて調査した報告では、膀胱炎にかかりやすい人は外陰部周囲の細菌がしばしば尿道から膀胱に再侵入したり、性行為を契機として膀胱炎が再発すると報告されています。
 これまで膀胱炎の成り立ちや予防法について述べてきましたが、なによりも正確な診断と適切な治療法の選択が必要と思われますので、一度お近くの泌尿器科を受診されることをお勧めします。