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2000年11月25日 No.350
「外痔核の治療と再発防止」
事務系の仕事をしている30歳の女性です。2〜3週間ほど前からお尻(肛門)にイボのようなものができ、病院で診てもらったところ外痔核といわれ、座薬をもらいました。よくお風呂に入り、温まり、薬を使っていれば1ヵ月位で治るように言われましたが、大丈夫でしょうか。再発も多いと聞きますので気になります。生活上の注意なども教えてください。 (大阪・主婦)
<答える人>
健保連大阪中央病院
外科部長
長岡 眞希夫 氏
痔核というのは、肛門管にできた静脈瘤(静脈がうっ滞し腫れて腫瘤状になったもの)です。この痔核のなかで、肛門管の口側に発生したものを「内痔核」と呼び、肛門管の外側(つまり肛門縁)に発生したものを「外痔核」と呼びます。痔核のできる原因は、排便時のいきみにより肛門静脈叢のうっ血がくりかえされ、静脈が腫瘤状に腫れ上がるとともに、血管壁が器質化して堅くなることによっておこります。
また、腹腔内静脈圧の上昇した状態(肝硬変や女性では妊娠している状態)ではよりおこりやすくなります。外痔核は、内痔核にひきつづいて肛門周囲の皮下静脈叢がうっ滞しておこる場合と、静脈叢の枝が破れて肛門周囲の皮下に血腫を来しておこる場合があります。この血腫を形成しておこる痔核は「血栓性外痔核」と呼ばれ、激しい疼痛と腫脹を伴います。
治療は、保存療法、非観血療法と手術療法があります。保存療法は、薬物による治療で、薬剤の主な成分は、鎮痛剤や抗炎症剤、末梢循環の改善剤などからできています。経口のものと、座剤のものがあり、座剤には軟膏タイプと座薬タイプがあります。非観血療法には、硬化療法、結紮療法、凍結療法などがあります。硬化療法は硬化剤を痔静脈の周囲や内部に注入し、血行を途絶させて治すものです。結紮療法は痔核を結紮して痔核を壊死脱落させるものです。凍結療法は、痔核を凍結させて壊死脱落させるものです。手術療法は、痔核を手術的に切除してしまうものです。外痔核の場合は、血栓性外痔核の場合の急性期に「血栓除去術」を行うことがありますが、それ以外では、外痔核が衣類などとこすれて出血するとか衣類が汚れるなどの場合に「痔核切除術」が行われるだけで、一般には、あまり、手術の適応になることはありません。多くの場合は、薬剤による保存的治療で治ってしまいます。
質問者の場合も、お風呂に入り、肛門部の血行を改善させ、座薬を使用していれば1ヵ月位で治ると言われたように保存的治療で大丈夫と思われます。しかし、薬剤による治療は、静脈の腫脹を解除するもので、痔核そのものを取り除くものではないので、静脈のうっ滞を来すような状態(長時間の立仕事や、座ったままの仕事、便秘で排便をきばったり、またその逆に下痢で頻回に排便したりすることなど)によって、再発することがあります。
したがって、日常生活で気をつけるとすれば、便通の調整をおこない、お風呂によく入って肛門の血行改善を促し、トイレでは、肛門洗浄などにより肛門の清潔を保ち、食生活もあまり刺激の強いものや、アルコールの飲み過ぎなどは控えるといったことが勧められます。