広報誌「かけはし」

■2019年5月 No.572


 健保連大阪連合会は4月15日、大阪市北区のホテルモントレ大阪で「安心・納得の医療保険制度に向けて あしたの健保組合を考える大会 PART4」を開いた。大会には230人の健保組合関係者が出席。近畿地区各府県からも多数の参加があった。大会では前半に「消費増税後の社会保障はどうなる!その時、健保組合は?」をテーマに、西沢和彦主席研究員(鞄本総合研究所)が講演。後半には「安心・納得の医療保険制度に向けて」をテーマに、とかしきなおみ衆議院議員らによるシンポジウムが行われた。
小笹定典大阪連合会会長
 健保連は、高齢者医療の負担構造改革や実効ある医療費適正化対策の強化など、要求実現活動を全国で展開している。大阪連合会による「あしたの健保組合を考える大会」は、その一環で、今回で4回目の催し。
 大会には、大阪府内の健保組合役職員をはじめ、府外の近畿地区各府県の健保組合からも多数参加があり、230人が集まった。
 主催者を代表し、大阪連合会・小笹定典会長が開会のあいさつを行った。小笹会長は「健保組合は限られた財源のなかで、本来の保険者機能を発揮し、事業所とのコラボヘルスなどの保健事業や医療費適正化に取り組んでいる。国民皆保険の中核を担う健保組合の財政安定化を図り、健全な運営ができるよう、高齢者医療制度の負担構造改革を実現すべく、我々の主張を一般の方々に広く、粘り強く訴えていかなければならない。この大会を通じ、皆さんの意思結集を図り、健保連本部と連携のうえ、今後の取り組みを強化していくことをお願いする」と述べた。
 大会前半には西沢和彦主席研究員(鞄本総合研究所)が「消費増税後の社会保障はどうなる!その時、健保組合は?」をテーマに講演。後半には、とかしきなおみ衆議院議員(自民党・大阪7区)、健保連の河本滋史常務理事と西沢主席研究員によるシンポジウムが行われた。

基調講演「消費増税後の社会保障はどうなる!その時、健保組合は?」(内容抜粋)
西沢主席研究員
 消費増税分の使途は、大きく「後世代への負担の先送り軽減」と「社会保障の充実」に分けられた。しかし、今般示された「子育て世代への支援」という形で約1.7兆円が予定されることで、先送り軽減のための財源が侵食されている。
西沢和彦主席研究員

 社会保障・税一体改革の問題点は、@税の代替として社会保険料を流用しているA曖昧な国保の最終責任者B関心が病床偏重、プライマリケアに希薄C消費税を嫌われものにD社会保障は増税のニンジンに、ビジョン欠落E国民の統治客体意識と行政依存体質を助長F覆い隠され続ける年金財政の深刻さ―が挙げられる。
 特に、@については、国保への国庫負担の肩代わりとして総報酬割を導入することで、負担と受益の対応関係を一段と崩した。根底には、消費税からの逃避。つまり、増税といえば人聞きが悪いため、健康保険料等で賄ったとしても、自身に返ってくるもの、あるいは企業からすれば福利厚生の一環であるというイメージがある。だから総報酬割を導入して財源を調達するほうが政府としては楽だったと推測する。また、Cについては、本来、消費税の利点への理解浸透が図られるべきであるにもかかわらず、政府税調はじめ理論的な議論が不在であったこと、二度にわたる消費税率引き上げの先送り、過剰な景気対策などにより、10%への引き上げ後のさらなる引き上げの展望が開けず、税の代替としての社会保険料流入も止まらない状況となった。

シンポジウム「安心・納得の医療保険制度に向けて」
 シンポジウムは西沢主席研究員がコーディネーターとなり、とかしきなおみ衆議院議員、河本滋史健保連常務理事をパネラーとして進められた。

【医療保険制度の今日的課題と今後】
 まず、西沢主席研究員からパネラー2人に対し、意見を求めた。
 
河本滋史健保連常務理事
河本常務理事は「現在、健保連は2022年危機を強く訴えている。団塊の世代が後期高齢者に到達し始める2022年から医療費の増加は深刻化していく。健保組合全体における義務的経費に占める拠出金の負担割合は49.6%となり、自らの保険給付を上回る50%を超える組合の割合は53%に達する。団塊ジュニアが高齢者になる2040年に向けた改革も必要となるが、今のままで健保組合が残っているのか危機感を感じている。負担構造改革をはじめとした施策をこの3年間でやり遂げるための対応を全力で行う」と述べた。
 とかしき衆議院議員は「日本の保険制度を持続可能な制度としていくためにはどうすればよいか、国も真剣に悩んでいる。2018年の新経済・財政再生計画改革工程表に、自助・共助・公助の範囲で見直しを行うことが明確になっており、社会保障制度の抜本的な見直しを行う方向性を打ち出している。これからは、給付の削減と負担の拡大に続く第3の道を探し、人生100年時代に向けた生き方や働き方など、多様性を認めていくときに、社会保障制度とはどうあるべきかを考えなければならない」と述べた。

【今後の社会保障制度改革の進め方】
 西沢主席研究員から、働き方改革やかかりつけ医の課題、地域包括ケアを含めて意見を求めた。
とかしきなおみ衆議院議員

 河本常務理事は「いわゆる総合診療医の育成を進めなければならないが時間がかかる。その間をどう繋ぐかが地域包括ケアを含めて大きな課題と認識している。やはり、いろいろな関係者の連携が重要となり、我々保険者がどのように関わっていくのかをひとつのポイントとして考えていく。いずれにしても、今まで以上に保険者機能を積極的に発揮して、一緒に政策を作り上げていくことが必要。今後、雇用形態が多様化するなかでの保険者のあり方については、まだまだ検討途上であるが、大きな課題として受け止めていきたい」と述べた。
 とかしき衆議院議員は「まず、働き方改革はすごい勢いで進んでいる。これから兼業等が当たり前になるようであれば、健保連としてどのように対応しなければならないかを考えておかなければならない。また、かかりつけ医や家庭医等について重要なのは、健康なときのデータをおさえておくこと。現状、個人で健康管理をしているという場合であっても、本当に自分に合っているか分からないまま実行している状況である。これを整理してあげる医療の専門家が、多職種で必要になってくるのではないか」と述べた。

【消費増税後の展望と社会保障・税一体改革への対応】
 西沢主席研究員は、とかしき衆議院議員に対し、消費増税後の対応について意見を求めた。
 とかしき衆議院議員は「この秋には絶対に増税される。しかし、いろいろな見直しを行っているが、消費税10%ではまだまだ足りないため、今後も上がる可能性はある。我々政治家は、消費税を上げることに対し、勇気をもって説明する心構えが問われている。日本の給付と負担の割合は非常に悪い。しかし、負担を増やすと嫌がられるため、将来からの先食いによる対応を続けた結果、次の世代に負担を残す結果となる。今の世代に、平等で透明性のある負担を願うとなれば、やはり消費税ではないかとなり、今後も議論は続く。また、給付の効率性、負担の公平性等についても、今後はきちんと説明しなければならないと思う」とした。
 続いて西沢主席研究員は、河本常務理事に対し、保険者機能の強化などを含めて一体改革への向き合い方について意見を求めた。
 河本常務理事は「高齢者医療費の負担構造改革を訴える一方で、我々の大きな使命として、加入者を健康にすることが挙げられる。健保組合は他の保険者と比べ、職場と一体となった健康づくりを進めることにより、年齢階級別の医療費をみてもアドバンテージがある。近年では事業主とのコラボヘルスにより、取り組みを強化している。また、高齢者医療費の負担により財政的に厳しい健保組合に対しても、一定の支援を図る取り組みを始めた。これは保険者機能の極めて大きな要素であると思っている」と述べた。
 これに対し西沢主席研究員は「健保組合における保健事業の取り組みは非常に大きな特徴である。協会けんぽと違い、職場と保険者が一体となり、健康状況を共有して解決できるメリットがある」とした。

【大阪万博と健都】
 西沢主席研究員から、とかしき衆議院議員に説明を求めた。
 とかしき衆議院議員は「健都(北大阪健康医療都市)は、健康寿命の延伸をテーマに考えられた町。厚労省と相談し、まず吹田市と摂津市において、地域の医療機関が健康管理を行い、それに対して地域の人たちが医療機関に通い、健康管理にお金を払うという関係を築けるかどうかに挑戦していくことが一番の目的である。なぜ循環器に注目したかというと、吹田市に国立循環器病センターがあったことに加え、循環器の病気は食事と運動のバランスで予防がやり易いことが挙げられる。また、健都の特徴として、研究機関や民間企業を誘致し、イノベーションパークとして、常に新しいものを発信できるようになる。この健康産業は今後伸びる産業の一つと思われ、ぜひ大阪が力を入れるべきであり、計画性をもってこの産業を育てるため、起爆剤として大阪万博を活用し、アピールするといいのではないか」と述べた。

【医療保険者の今後】
  西沢主席研究員から、河本常務理事に対し意見を求めた。
  河本常務理事は 「加入者にとって効果的で 効率的な医療を どのように提供するのか、
木内博常務理事
そのために何ができるのか。今や、これが保険者の重要な使命の一つと認識している。我々には加入 者のデータがある。このデータをできるだけ活用し、医療関係者との連携を少しずつでも進めていきたい。今までは、この部分ができていなかったと思うが、そういう時期にきていると思う」と述べた。

会場から2氏が要請
  シンポジウム出席者に対して、会場の2氏から意見や要請があった。大阪府信用金庫健保の木内博常務理事は、とかしき衆議院議員に対し、先般開催された未来投資会議における全世代型社会保障制度の提言を踏まえ、「厚生労働大臣が2040年の人口減少社会における今後のあり方 を仰っているが、 健保組合が存続していることを前提にしていると思われる。すでに今 、健保組合は高齢 者医療制度への拠出金負担の増加により存続の危機である。悠長なこと を言っている場合ではない」と訴えた。
赤阪朋彦常務理事

  近畿日本鉄道健保の赤阪朋彦常務理事は、 自健保組合の厳しい現状を説明し、「2025年の国民医療費は52兆円を超えると試算されており、そのなかでも終末期における医療費が半分を占める。これは現役世代と切り離せない問題であり、昨年、厚労省は『人生最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン』をまとめたが、国民や医療機関に十分周知されているといえない。 在宅や介護施設での看取りができる体制が作られなければ、医療費の適正化が図れない」と、国や健保連に対し早急な 対応を要請した。
◇     ◇
佐野雅宏健保連副会長
  大会の締めくくりに、佐野雅宏健保連副会長があいさつを行った。 佐野副会長は、「今の医療保険制度をどのようにして次の世代につないでいくのかということは大きな課題である。果たして今のままでつないでいけるのか、不安感、閉塞感を抱いていると思う。今日のお話を聞いて、変えなければならないこと、変えてはいけないことを一度整理しないといけないと感じた。我々はデータという大きなエビデンスを持っているが、もっと活用していかなければならない。今後、健保組合、健保連がより行動していくことが重要となる。皆さんのご支援・ご協力を賜りながら頑張っていきたい」とまとめた。