広報誌「かけはし」

■2019年1月 No.568
時評

健康長寿・生涯現役社会に向けて

 昨年10月、内閣改造後に未来投資会議が行われた。そこでは、全世代型社会保障も今後の検討の柱とされ、「生涯現役社会の実現に向けて、意欲ある高齢者に働く場を準備する」、「人生百年時代をさらに進化させ、寿命と健康寿命の差を限りなく縮めることを目指す」、「現役時代から自らの健康状態を把握し、主体的に健康維持や疾病・介護予防に取り組み、現役であり続けることができる仕組みを検討する」などの方針が示されたとのことである。
 年をとっても、健康であり続け、できるだけ長く現役で働くことができ、結果、社会保障制度を支える人を増やそうという考えであろう。こうした考え方は、健保組合が行う特定保健指導などの保健事業にも共通のものである。
 しかし、健保組合における特定保健指導の現場では、生活習慣改善に対する加入者一人ひとりの意識が必ずしも高くなく、効果が十分に発揮できているかは心もとない。加入者の人たちに、どうすれば健康維持や疾病予防の意識を高めてもらえるのかが、健保組合としての悩みの一つである。
 もちろん、単一型の健保組合の場合、母体企業の経営陣からのメッセージや、職制を通じた従業員への周知徹底も可能である。事実、健康経営については、国が進めてきた取り組みに、企業も大いに関心を持ち、予想外といっては失礼だが、ここ数年の間で大いに広まってきている。
 他方、連合型、総合型の健保組合においては、加入事業所の関心もまちまちであり、また、健保組合から加入者への直接の働きかけも難しい面がある。
 国は、健保組合の保健事業の取り組み状況に応じて後期高齢者支援金を加減算する制度について、保険者インセンティブを強化する方向で考えているようだ。しかし、国は、健保組合の尻を叩くだけではなく、国民の健康に対する意識を高める工夫をしてほしい。
 例えば、国民の祝日である敬老の日、体育の日を利用するのはどうか。敬老の日は、法律では「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」日とされている。制定は1966年で、高齢化率が6%前後の時代である。今の時代に合わせ、健康長寿の社会を目指す趣旨を加えてもよいかもしれない。
 1965年に制定された体育の日も、運動による健康維持に通じる祝日である。
 また、民間の団体が中心となって設立された、「生涯現役の日」制定・普及推進委員会が、国連高齢者デーである、10月1日を生涯現役の日と制定した。個人が生涯にわたって自立を目指し、すべての世代が活躍できる社会を目指すとしている。
 敬老の日、体育の日をこの生涯現役の日と組み合わせ、健康長寿、生涯現役を推進する期間を設定すれば、国民に広くPRすることができる。両祝日の名称を、「健康長寿の日」などと変更し、第3週、第2週の月曜日を変えて秋の大型連休にするのもよいかもしれない。こうすれば、社会に対し大きなインパクトを与え、テレビや新聞などのマスメディアも健康維持や疾病予防、運動の習慣について、大いに取り上げるであろう。そうなれば、健保組合としても、保健事業を推進しやすくなると考える。
 こうしたことを通じて、生活習慣改善に消極的な人たちの意識・関心も高めてもらえるのではないか。
 以上述べたことは、中長期的に医療費の伸びを抑えるものである。一方、かねてより訴えているとおり、増え続ける高齢者医療への拠出金負担により、健保組合の財政悪化は限界にきている。
 健保組合の存続、国民皆保険の維持には、高齢者医療の負担構造改革が待ったなしの状況である。中長期の施策とともに、早期の対応をまた切に願うものである。
  (A・K)