広報誌「かけはし」
 
■2010年12月 No.471
時評

欲しい社会保障グランドデザイン

− 平成18年医療制度改革は空洞化 −


 「四半世紀に一度の大改革」といわれた平成18年の医療制度改革が空洞化してしまった。
 もともと、この改革の趣旨は、安心・信頼の医療の確保と予防の重視、医療費適正化の総合的な推進、超高齢社会を展望した医療保険制度体系の実現―であり、一体で関連法が整備された。具体的には、@特定健診・特定保健指導の実施、A療養病床の再編、B都道府県単位での医療費適正化計画の策定、C新たな高齢者医療制度の創設、D高額療養費制度や出産育児一時金など健康保険制度の改正、Eレセプト電子化の促進など、多岐にわたっている。それ以外でも、平成18年度には診療報酬のマイナス改定が改革の趣旨に沿って実施された。
 当時、一連の改革にともない、健保組合全体では巨額な負担増が求められたが、打ち出された施策は、国民皆保険維持のための中長期的視点からのものであって、それぞれ関連していることを踏まえ、勇断をもってこれを是とした。
 しかし、医療制度改革関連法の成立から4年あまり経ち、個々の施策の進捗状況をみると、ガラッと様相を変えている。
 特定健診・特定保健指導の状況は、健保組合の実施率は高いが、ほかの医療保険者では低迷。適正化計画による医療費分析などは遅滞。高齢者医療制度は不評につき改革案の検討が進むものの、公費導入増というおおかたの意見が反映できるか危ういうえ、健保組合への負担の上乗せ案などが現在検討されつつある。
 出産育児一時金は再引き上げが行われ、原則42万円に。保険者から医療機関への直接支払制度も導入された。平成23年度からのレセプト原則完全オンライン化は後退。今年度の診療報酬はプラス改定・・・。健保組合にとって暗転材料ばかりが目立つ。
 最近では、療養病床の再編問題が俎上にある。現行法では、介護療養型病床に対して老健施設、介護老人ホームなどへの転換を促し、平成23年度いっぱいで廃止。法施行時38万床あった慢性期の医療療養型病床と介護療養型病床を医療療養病床15万床に減らすというものである。また、それに対して健保組合は病床転換支援金を求められ、拠出している。本来、筋違いと考えられるが、病床転換の趣旨が社会的入院の是正と医療費の適正化にあり、やむなく受容した経緯がある。
 しかし、法施行後、病床転換に二の足を踏む医療機関が多く、改正法による当初の構想は腰くだけになり、病床転換の緩和論議が起きているのが実情だ。そうなれば健保組合としては、本来の趣旨にそぐわない拠出金は出せない。返してもらうのが当然である。
 法施行時は相互に関連していたはずの施策が、4年あまりのうちにそれぞれ変形された結果、改革全体がいびつになってしまった。健保連の平井会長は「国民に社会保障全体のグランドデザインを提示することが不可欠」と強く求めている。政府がなすべきなのは、このことではないか。
  (T・M)