広報誌「かけはし」
 
■2004年7月 No.394
時評

真のニーズを考えよう!
―カード化の推進にあたって―


 キャッシュレス時代になって久しいが、今や行政サービス面でも徐々に個人生活に即応した「IT化」が浸透してきた。
 生活周辺の各方面でIT風が吹くなか、「被保険者証のカード化」も時機を得たテーマであることは間違いない。それでは実際に、全国約1、600組合のカード化に対する取り組みはどのような状況になっているのだろうか、健保連によると今年3月時点で次のように把握している。
 まず「カード化の実施状況」については65組合が実施済みで、その形態別では厚紙…3、二次元バーコード…7、ICチップ利用…3、その他プラスチック等…52、実施に向けて検討中が28組合ある。
 実施する「メリット」として被保険者(含、家族)の利便性を上げる一方、「デメリット」では医療機関の受診者把握ミス、カード紛失の多発等としている。このなかで気がかりな点は厚労省が平成13年4月に施行規則の改正を行いカード化の実施を打ち出したにもかかわらず、3カ年が経過した今においても、その実施予定込みで、カード化の実施率は全体の6%弱にとどまっているということである。この数字にこそ我々がカード化を前に日頃、抱えている悩ましさの本質があるように思える。
 もとより、カード化の狙いは「医療を受ける側(被保険者)」、「医療を提供する側(医療機関)」、「適正な医療費を支払う側(保険者)」の三者それぞれの立場での利便性、効率性等が満たされるところにある。しかし、このような高度な、いわば理想的な機能を持つカードに仕上げるには現時点でクリアすべき課題が多すぎるのも事実である。その第1点は、4、5年先とされている「医療制度の抜本改革」が不透明であること。第2点として、カード化に際し、この三位一体の機能を統合するには、技術面(含、インフラ)で相当の時間とコストが必要となる。このようにカード化推進の環境が不透明な現在、その推進に躊躇の雰囲気が漂うのも自然な流れかも知れない。従って、先の健保連の調査結果に見る実施済みの組合が単なるプラスチックや、厚紙で対応していることもうなずける。
 このような状況下、政府管掌健康保険が今年の3月にプラスチックカード化を完了し、健康保険組合も予定されていた平成17年の証更新時期にカード化をと考えているところもあることを考え併せた場合、カード化の実施率が来年度にはかなり上がるものと予測される。
 しかしながら、前述したようにカード化の本来の目的を達成するための条件整備が遅々として進まない状況のなかにあって、カードにICチップを導入する等の対応時に、必ず再作製が必要となる。プラスチック等のカード化を被保険者の利便性の確保を図るというメリットのみで考える風潮に疑問を感じざるを得ない。
 以上のことから、カード化の実施は組合個々の実情を勘案し保険者の裁量に委ねられていることを踏まえ、時代のすう勢に流されることなく対応すべきと考える。
(M・O)