2 糖尿病、痛風の検査
■ 糖尿病は国民病
糖尿病は、膵臓で作られるインスリンというホルモンの働きが弱くなったり分泌量が不足して、 体内の糖代謝(食物の糖質を分解しエネルギーに変える働き)がうまくいかなくなり、血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が高くなる病気です。
今や、国民の7人に1人が糖尿病又はその予備群であると言われており、まさに「国民病」といえる拡がりようです。
糖尿病は2つの型に大別され、先天的な原因などでインスリンが分泌されない1型糖尿病と、生活習慣などの後天的な原因によって インスリンの分泌が悪くなる2型糖尿病が ありますが、通常見られるのは後者であり、最近若い人にも増えているのは、飽食と運動不足という生活習慣が主な原因になっています。
■ 怖いのは合併症
糖尿病は進行すると治りにくい病気です。血糖値が高くなると、その結果、たんぱく質や脂質の 代謝も悪くなり、種々の合併症を引き起こします。糖尿病の本当の怖さはこの合併症にあります。 3大合併症といわれる腎臓障害や眼の障害、神経障害のほか、高血圧や動脈硬化、壊疽など、発症が全身にわたる重篤な疾患が多くあります。
糖尿病は症状として尿に糖が出るとは限らず、血液検査をしないと糖尿病になっているかどうかはわかりません。
2−(1) 血糖 (BS)糖尿病を疑う
米や穀物に含まれる炭水化物は体内で分解され、糖質となって腸から吸収されて、ブドウ糖 として血液中に入ります。この血液中のブドウ糖が血糖であり、私たちが生きていくためになく てはならない体のエネルギー源として大切な役割を果たしています。
検査では、この血糖値(血液中のブドウ糖濃度)を調べます。糖尿病は、簡単に言うと、血 液中のブドウ糖が増えてしまう病気ですので、その濃度をみて糖尿病かどうか調べます。
■血糖値のおおよその目安
値 mg/dl | 判 定 | 対 策 | |
---|---|---|---|
(空腹時) | (食後2H) | ||
59 以下 | 59 以下 | 低血糖症 | 原因の精査を受ける。 |
60〜109 | 60〜139 | 正 常 | |
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境界型糖尿病 |
原因の精査を受け、日常生活改善し、医師の管理・指導と 定期的な検査を受ける。 |
126以上 | 200以上 | 糖尿病 |
2型糖尿病かどうか、合併症の有無などの検査を受け、 医師の治療、管理を受ける。 |
・食べ物を摂ると血糖値は上がるので、空腹(8時間以上)のときに採血して調べます。
前日の過食、アルコール多飲は避けること。
健康な人でも、1日の血糖値は絶えず変動しています。また、年齢が上がるとともに高くなります。妊娠中の女性の血糖値は低くなります。
2−(2) ヘモグロビンA1c (HbA1c)糖尿病の有無を調べる
血糖が高い状態が長く続くと、血球のヘモグロビンなどの蛋白にブドウ糖が結合し、その割合が 増加します。このブドウ糖と結合したヘモグロビンのことをヘモグロビンA1c(又は「糖化ヘモグロビン」)と言いますが、それは一度結合して糖化してしまうと、赤血球の寿命が尽きるまで元に戻 りません。この特性に着目して、血球内の全ヘモグロビンに対してヘモグロビンA1cの占める 割合を測定すれば、一定期間(過去4〜8週間)の血糖値の変化/異常、つまり血糖がうまくコントロールされているかどうかを知ることができます。
血糖値は直近の食事の状態に影響されますが、このヘモグロビンA1cをみれば過去4〜8週 間にわたる食生活の状態がわかるため、現在では最もよい糖尿病の検査とされています。
■ ヘモグロビンA1c のおおよその目安
値 % | 判 定 | 対 策 |
---|---|---|
5.8 以下 | 正 常 | |
5.9〜6.4 | 正常又は 良いコントロールの糖尿病 |
要経過観察とされ、生活習慣の改善が求められる。 |
6.5 以上 | コントロールの悪い糖尿病 又は合併症 |
糖尿病の有無の検査を受ける。 すでに糖尿病の場合は治療を強化する。 |
ヘモグロビンA1cの上昇と心筋梗塞や細い血管障害からくる合併症の発症とが関係している ことがわかってきました。検査数値が上がる毎に合併症になる危険も上がっていくと言えます。
2−(3) 尿酸痛風および腎機能を調べる
新しい細胞に代わる新陳代謝に伴い、古い細胞が分解してできる老廃物が尿酸です。
食べ物に含まれるプリン体も吸収されると体内で尿酸になり、血液中に増えていきます。
本来ならそれらは老廃物として尿中に排泄されますが、増えすぎると、血液中で結晶になって障害を起こします。これが痛風です。
尿酸値が高くなると、関節に沈着して炎症を起こし、痛風発作(通常、足の親指の付け根の関節 に激痛と発赤)がみられ、腎臓に徐々に沈着して腎障害を起こします。また、尿管に流れて結石 をつくる場合もあります。尿素窒素、クレアチニンと並んで腎機能検査の1つともなります。
なお、尿酸は、激しい運動やストレスなどで体内に作られるだけでなく、プリン体という物質を多く含む食物を摂りすぎても値が高くなります。 プリン体はイワシやかつお、肉やレバー、ビールなどに多く含まれます。
■尿酸値のおおよその目安
値 mg/dl |
判 定 | 対 策 |
---|---|---|
7.0 以下 | 正 常 | |
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軽度高尿酸血症 | 日常生活の改善が必要です。 |
8.5〜9.0 | 中程度高尿酸血症 |
日常生活を改善しながら、家族に痛風や腎 障害がある場合は薬で治療する。 |
6.5 以上 | コントロールの悪い 糖尿病又は合併症 |
糖尿病の有無の検査を受ける。 すでに糖尿病の場合は治療を強化する。 |
検査の前日に激しい運動をしたり、過度の飲酒をすると値が高くなります。