健診結果の見方

1 脂質の検査

脂質検査には、血液中の総コレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロー ルの検査がありますが、基準値を超えている場合は脂質異常症(高脂血症)の疑いがあります。 しかし検査をして高い数値が出たとしても、自覚症状はあまりないのが普通です。ところが、その ままにしておくと、いろいろな生活習慣病が起こってきます。
脂質異常は、摂取エネルギー量が消費エネルギーより多い、動物性脂肪を多く含む食品を好んで 食べる、運動不足、ストレス過多でイライラしがち、といった生活習慣の人に多く見られます。

1−(1) 総コレステロール (TC)動脈硬化等の進み具合を調べる

コレステロールは、肝臓で作られ細胞の膜を構成したり、腸内での脂肪の消化に役立つ胆汁酸や 性ホルモンを生成する大事な成分です。しかし、これが多すぎると、動脈の壁に沈着して動脈硬化 を引き起こす可能性が高くなります。特に、心筋梗塞などの虚血性心疾患の発生率は、血液中の コレステロールと相関しています。

■ 総コレステロール値のおおよその目安

値 mg/dl 判 定 対   策
129以下 低コレステロール血症 栄養状態、肝機能、甲状腺機能をみる。
130〜219 正 常  
220〜239 境界域 異常との境界域であり、食事療法や運動療法を開始する。
240〜279 中等度高コレステロール血症 食事療法、運動療法を確実に実施し、
他の危険因子あれば投薬治療へ。
280以上 高度高コレステロール血症 医師による治療が必要

数値は加齢に伴い増加し、男性では50歳代、女性は60歳代がピークを示す。
(女性は閉経後が150〜239 が基準値)

1−(2) 中性脂肪 (TG)糖尿病、肝障害等の可能性をみる

中性脂肪は、食物摂取後小腸で吸収され血液の中に入ってエネルギー源として使われます。皮下脂肪や肝臓の脂肪として蓄積されますが、増えすぎると肥満、脂肪肝、糖尿病等の原因となり、悪玉のLDLコレステロールの増加につながるため、動脈硬化を進め脳卒中や心臓病の素地になります。 特に食べすぎ、アルコールの摂りすぎで値が上昇します。

■ 中性脂肪値のおおよその目安

値 mg/dl 判 定 対   策
29以下 低中性脂肪血症 原因となる病気の有無を調べる。
30〜149 正 常  
150〜299 軽度高中性脂肪血症 食事療法や運動療法を開始する。
300〜749 中等度高中性脂肪血症 食事療法、運動療法を確実に実施し、
他の危険因子あれば薬物療法を行う。
500mg/dl以上の人は禁酒。
750以上 高度高中性脂肪血症 膵炎の危険性もあり、薬物療法を行う。

通常、男性の値は女性よりも高く、男性では40代、女性では60代に最も高くなります。

1−(3) HDLコレステロール 脂質異常症、動脈硬化等の病気の有無を調べる

HDLコレステロールは、いわゆる「善玉コレステロール」のことです。血中の余分なコレステロールを肝臓に戻す運搬役であり、血管壁にへばりついて動脈硬化の原因となる脂肪(LDLコレステロール)を除く働きがあります。
したがってHDLコレステロールが少ないと、動脈壁へのコレステロール沈着が増えることになり、動脈硬化を促進、その結果、脳梗塞、虚血性心疾患、腎不全、肝硬変、糖尿病などに進行します。

■ HDLコレステロール値のおおよその目安

値 mg/dl 判 定 対   策
19以下 先天性異常の疑い 脂質に関する詳しい検査を行う。
20〜39 低HDLレステロール血症 動脈硬化の危険あり、食事や運動、禁煙など生活改善を実践。
40〜99 正 常 (女性の場合、50〜109mg/dl)
100以上 高HDLレステロール血症や
先天性の異常の疑い
原因を調べるため詳しい検査を行う。冠動脈疾患や他の危険
因子の有無をみて食事療法、運動療法、薬物療法を行う。

年齢ととも値が低下し、さらに男性は女性より低くなる傾向があります。

1−(4)  LDLコレステロール 動脈硬化等の病気の有無を調べる

血液中ではコレステロールなどの脂肪は種々のたんぱくの運び屋と結合して存在していますが、そのたんぱくの運び屋の一つがLDLコレステロールで、血管を通ってコレステロールを全身に運びます。
しかし、これが増えすぎると、血管の壁に沈着してこぶを作り動脈硬化を起こす危険があるため、「悪玉コレステロール」とも呼ばれます。10mg/dl 増加すると、心筋梗塞の発生が10−15%増加すると言われます。
なお、日本動脈硬化学会では、前述の善玉のHDLが高いために総コレステロール値が高い人もいるため、総コレよりこのLDLで判断したほうが合理的とした診療指針の改定を行いました。

■ LDLコレステロール値のおおよその目安

値 mg/dl 判 定 対   策
60〜119 正 常  
120〜139 (境界域) 動脈硬化の危険あり、食事や運動、禁煙など生活改善を実践。
140以上 高LDLレステロール血症や
先天性の異常の疑い
原因を調べるため詳しい検査を行う。冠動脈疾患や他の危険
因子の有無をみて食事療法、運動療法、薬物療法を行う。